事故物件の売却について!おさえておくべき事故物件周りの基礎知識
皆さんも『事故物件』という言葉は聞いたことがあると思います。基本的には、賃貸物件市場でよく聞かれる用語で、事故物件になると貸す側からすれば「家賃を下げなければならないため、お荷物物件になってしまう…」と言ったイメージですね。もちろん、借りる側からすれば、同条件の物件と比較すれば、格安で借りることができるため、事故物件ということを気にしないという人であれば、意外にありがたいと考えられ、わざわざ事故物件を探しているという方までいると言われています。
それでは、不動産売買業界での事故物件の取り扱いとはどういったものになるのでしょうか?例えば、自分が所有している物件が事故物件になってしまった場合、売却を考えたとして「本当に売れるものなのかな?」ということが気になってしまいますよね。しかし、事故物件でも所有している限りは税金などが課せられてしまいますし、住まなくても適切な管理をしなくてはいけないため、所有を続ける限りさまざまなコストがかかってきてしまいますし、可能な限り早く手放したいと考えてしまうものだと思います。また、事故物件だということが知られてしまうと、買い手が嫌がりまともな価格で売却できないのではないか…などと不安になってしまうことでしょう。
そこでこの記事では、事故物件の売却を検討した際に、売主が絶対におさえておかなければならない基礎知識をご紹介していきます。「高く売りたい!」と考えて、事故物件であるということを隠してしまうと、後々トラブルにつながりますので、以下の内容は必ず押さえておきましょう!
そもそも『事故物件』とは?
それではまず、「自己物件とはどんな家を指しているの?」と言った基礎知識について解説していきたいと思います。事故物件と呼ばれる家は、一般的に、物件内で誰かが死亡した事実などがある不動産のことを指しています。ちなみに、『事故物件=殺人事件などがあった家』と思うかもしれませんが、自然死のような致し方ないものに関しても事故物件となります。
事故物件は『心理的瑕疵』があるかどうか
一般的に、物件を購入した後に見つかる『欠陥』のことを瑕疵と言います。そして、瑕疵にもいくつかの種類が存在しており、「心理的瑕疵」「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」の3つに分類されています。事故物件が関連するものは、この中の『心理的瑕疵』の部分で、事故や事件、自殺などが物件内で発生して、購入者がその家に住むことに心理的なストレスを感じてしまう…と言った瑕疵を表します。
テレビなどでも過去に自殺のあった物件に住んだところ、その人が幽霊として出てきて…と言ったドラマが良く作られていますが、過去にあった事実で次の住人が「嫌な思いをする…」かもしれないといった心理的瑕疵のある物件が事故物件と呼ばれ、一般的に敬遠されてしまう訳です。事故物件と判断されてしまうような事例は以下のようなものです。
- 火事で人がなくなった事実がある…
- 殺人事件の現場になった…
- 過去に自殺が行われた事実がある…
- 孤独死があった…
- 原因不明の死亡 など
上記のような事実があった物件は、購入者が心理的なストレスを感じてしまうと考えられ、事故物件として扱われます。
事故物件になったらどうすれば良い?
それでは事故物件になってしまったらその家はどうなってしまうのでしょうか?当然、事故物件になってしまうと、法律で売却を禁止される…なんてことはありません。
不動産売却を行う時には、上述したどのような瑕疵であっても、買主に対して事前に「瑕疵があること」を告知する義務があります。そして、心理的瑕疵のある物件(事故物件)に関しても、告知義務があると考えてください。ただし、心理的瑕疵に関しては、目に見えないアバウトな部分となりますので、その物件で起きた事象の程度によっては、「告知するほどでもない(告知の義務はない)」と考えられることもあります。
要は、心理的瑕疵が告知の義務がない程度のものと判断される場合は、その他の一般的な物件と同じような取り扱いを受けることとなります。もちろん、「告知義務がある」と判断される場合は、物件の取り扱いが変わってしまうので、その辺りを次の章で解説していきましょう。
事故物件の告知義務について
もし売却を考えている不動産に心理的瑕疵があると判断される場合、その事実を事前に買主に伝える告知義務が発生します。つまり、事故物件というものは、このように「心理的瑕疵の告知義務」を課せられる物件のことを指していると言い換えることができ、物件内で誰か死亡したとしても「告知義務はない」程度とされるものは、事故物件ではないとも言えます。
ここでは、売主がおさえておきたい、心理的瑕疵の告知義務に関する基礎知識を簡単にご紹介しておきます。
事故物件の明確な法律的ラインはない
2021年5月の国土交通省より「事故物件のガイドライン案」が公表されるなど、事故物件の定義を明確にする動き自体は強まっています。ただし、法律レベルでの明確化に関しては、いまだ完全ではないのが実情です。ガイドラインでは、事故物件の告知義務に関して、以下のようなラインを検討しているようです。
- 物件内で殺人事件、自殺、事故死が生じた場合⇒告知義務あり
- 物件内で原因が明らかでない死亡が生じた事実がある場合⇒告知義務あり
- 物件内で老衰、持病による病死などの自然死があった場合⇒告知義務なし
- 自然死の場合でも、長期間放置され、特殊清掃を必要とした場合⇒告知義務あり
- 原因不明の死亡 など
ガイドライン案によると、物件内で死亡の事実があったとしても、自然死の場合は告知義務はないとしています。これに関しては、「統計においても、自宅における死因割合のうち、老衰や病死による死亡が9割を占める一般的なものである。」「裁判例においても、自然死について、心理的瑕疵への該当を否定したものが存在する」などという考えからだそうです。ただし、自然死に長期間気付かず、特殊清掃まで必要になった…と言いう場合には、「買主・借主が契約を締結するかどうかの判断に重要な影響を及ぼす可能性がある」とし、告知義務があると考えられています。
告知義務が必要かどうかについては、基本的に買主がその事実に嫌悪感を抱くかどうかが重視されており、老衰や持病による自然死は、どの家でも起こり得るものと判断され、嫌悪的にとらえるべきものではないと判断されるようですね。以下に、国土交通省のガイドライン案のリンクを貼っておきますので、ぜひ確認しておきましょう。
> 国土交通省「不動産取引における心理的瑕疵に関するガイドライン(案)」
告知義務の事項について
事故物件を所有している方からすれば、「事故物件という事実は何時まで経っても消えないのか?」という点を疑問に感じてしまう方は多いと思います。賃貸物件市場では、「短期間でも一度貸し出せば事故物件でなくなる!」なんて考え方が一昔前に行われていましたし、「7年で告知義務がなくなる」などという話を耳にしたことがある人もいるかもしれませんね。
この部分に関しては、明確な「告知義務の時効」が定義されているわけではありませんが、一つの目安として7年という意識があるようです。ただし、心理的瑕疵というものは、目に見えないアバウトな物で、買主がその事実にストレスを感じるかどうかという部分があることを忘れてはいけません。例えば、世間でも大きな衝撃を与えたような有名な事件であれば、その噂は10年たっても、20年たっても消えない…という場合もあります。そのため、買主が物件購入後に、近所の人から「あんな事故があった物件を良く購入したよね」と聞かされ、それ期に嫌悪感を抱き始めた場合、告知されていなかった事実でトラブルになる可能性はあります。
要は、現状事故物件の告知義務には法律的に時効はないということです。上述したガイドライン案に関しても、不動産の売買契約においては「経過した期間によらず、買主に対して告知を要する」と想定されています。
事故物件の何を告知するのか?
ここまでの説明で、事故物件の売買においては、その事実を事前に買主に伝えなければならないということが分かっていただけたと思います。それでは、買主に告知する場合、何をどこまで告知しなければならないのでしょうか?事故物件の告知義務の範囲に関しても、法律で厳格に定義されているわけではありませんし、発生した事象から臨機応変に考えなければいけません。
告知義務は、買主が購入後に心理的瑕疵にストレスを感じてしまい、購入を後悔しない、住むことに不安を感じないようにするためのものです。そのため、以下のような観点で告知すると良いでしょう。
まず大切なのは、物件内で事故が発生した『時期』の告知です。売却時までに発生した事故に関しては、原則として記載しておきましょう。事故が発生してからかなりの時間が経過しているという場合でも、事故の衝撃が非常に大きかった、近隣で根強く噂されている…と言った場合、何かの拍子で知られてしまい、購入後にトラブルになる可能性もありますので、きちんと事故の発生時期を記載しておきましょう。
告知する事故が、物件のどの「場所」で起こったのか?もきちんと記載しておきましょう。特に、事故発生時の痕跡が残っている状態で売却する場合、内見時に不信感を与えないよう、事前に物件のどの場所で事故が発生したのかを記載しておきましょう。また、戸建ての場合、家の中ではなく、庭や備え付けの倉庫で事故が…なんてことも考えられますが、家の中ではない場合でも敷地内で事故が起きたのであれば、漏れなく記載しておきましょう。
マンションの場合、エレベーターや立体駐車場など、自宅とは関係のない共用部分で発生した事故なら記載の必要がないと考えますが、この場合も記載しておきべきです。さらに、マンションの隣室など、他の部屋で事故があった…なんて場合、その事実を知っていたのであれば記載しておいた方が良いとされています。
このように、事故物件については、きちんと告知義務を果たさなければ、後々買主とのトラブルが発生してしまうことになります。実際に過去には、「約7年前に強盗殺人事件があったことを告知せずに売却」したという事例で、売買の成否に大きな影響を与える事件の告知を怠ったと判断され、2,000万円弱の損害賠償が認められたという判例も存在します。他にも、心理的瑕疵の告知義務を怠って家を売却して、裁判沙汰にまでなったという事例が多いので、以下の判例集も確認しておきましょう。
『事故物件』を売却するには?
ここまでの説明で分かるように、心理的瑕疵のある事故物件を売却する場合、後からストレスを感じなくても良いように事前にその事実を告知しなければいけません。買主からすれば、通常の物件とは異なり、何らかの嫌悪感を感じてしまうような物件ということになりますので、当然通常の物件と比較して相場は安くなってしまいます。一般的に、事故物件は、通常の物件と比較した場合、以下のような感じで相場が下落すると言われています。
- 自然死があった物件⇒2割程度下落
- 自殺があった物件⇒3割程度下落
- 殺人事件があった物件⇒4~5割程度下落
なお、事故物件の購入価格に関しては、買主の気持ちに大きく左右されるものですし、場合によっては1割程度の下落に収まるなんて可能性もあります。ただし、事故物件を仲介に出して売却すというのは至難の業だと考えておいた方が良いでしょう。もちろん、事故物件と言っても自然死があったというような物件であれば、そこまで問題視されませんが、自殺や殺人事件があった…などという物件は、買主はかなりの嫌悪感を感じますし、相場が「いくら下がるのか?」と言った問題ではなく、単純に買い手が全くつかない…なんてことも考えられます。世の中には、事故物件を多く取り扱うような不動産会社も存在しますが、賃貸ならまだしも売却となると、不動産会社の営業努力でどうにかなる物でもありません。
したがって、事故物件を「早く売りたい…」と考えるのであれば、不動産買取業者に相談するのがオススメです。不動産買取の場合、「事故物件だ」という事実から相場が下落してしまう上、再販のためのリフォーム費などを差し引かれてしまうことから、仲介よりも安い価格で売却することになります。この点に注目して『仲介の方が高く売れる』と考える方がいるのですが、事故の内容によっては、仲介で買い手を見つけることなどほぼ不可能…と言った物件もあるのです。不動産買取の場合、どのような物件でも、早期売却できますので、いつ買い手が付くか分からない仲介と比較しても、そこまで売却価格が安くなるとも限りません。というのも、家は買い手を待っている間も税金や管理コストなど、さまざまなお金がかかりますし、売却後の高い仲介手数料をとられてしまいます。その辺りを総合的に考えると、買取の方が得だった…なんて事例はたくさんあるのです。