空き家の売却を考える!更地にした方が良い家の条件って何?
少子高齢化が進む日本では、自分が住むわけではない実家などを相続し、その物件の取り扱いに困ってしまう…という方が増えています。もちろん、立地条件が良い、建物の状態が良好といった場合には、比較的容易に売却することができますし、何なら賃貸物件として第三者に貸し出して継続的に家賃収入を得ることもできます。
しかし、所有する物件のほとんどは、売りに出しても買い手が付きにくい…、とても借り手が見つかるとは思えないぐらい劣化が進んでいる…などと言った状態で、税金や維持管理のための支出ばかり嵩んで「相続なんてするんじゃなかった…」と後悔してしまうケースの方が多いようです。
このような、取り扱いに困る物件については、「更地にした方が高く売ることができる!」という話を耳にしたことがある人も多いと思います。それでは、このような噂は本当のことなのでしょうか?建物を解体するにも、それなりにコストがかかってしまいますし、解体してもすぐに売れなかった場合、固定資産税が高くなりさらに頭を悩ませてしまうかもしれません。
そこでこの記事では、あなたが所有している物件について本当に更地にした方が良いのかを見極めるためのポイントをご紹介していきます!
不動産は更地にして売るべきなのか?
冒頭でご紹介したように、不動産の売却を検討して色々調べてみると「更地にした方が高く売ることができる!」と言った情報を目にする機会が多いと思います。しかし、この情報を信じて何も考えずに更地にしてしまうと後悔してしまうケースも少なくないので注意してください。
というのも、不動産売却については、全ての物件が「更地にした方が良い!」というわけではなく、建物が残っている状態でも問題なく売却することができる場合も多いのです。ここでは、更地にすべきと考えられる不動産の条件を簡単にご紹介しておきます。
更地にした方が良いと言われる理由は?
それではまず、「更地にした方が高く売れる!」と言われる理由について簡単に解説していきましょう。島国で、国土が狭い日本は、用途がある程度決まってしまう建物が残っている状態よりも、更地にしておいた方が最も価値が高くなると言われます。更地が高い理由は諸説あるのですが、一つに「更地は多様な用途がある」というのが大きなポイントになります。
例えば、商業地にそれなりの面積の更地があった場合、
- オフィスビルとして活用できる
- 高層マンションとして活用できる
- デパートなど、商業施設として活用できる
上記のように、さまざまな利用価値があり、いろいろな目的を持った人がその土地を欲しがります。
そして、どのようなものでも需要と供給の関係で価格は決まりますし、買いたいという人が増えれば増えるほど、獲得競争が激化して価格が上昇していくわけですね。
その一方、商業地にある土地でも、既にオフィスビルやマンションが建っている状態で売りに出た場合はどうでしょうか?建物が建っていれば、利用用途が限定されてしまうことになり、その用途で「利益が出せる」もしくは「そこに住みたい」などと考える人しか興味を持ちませんよね。つまり、買主間での不動産の獲得競争が緩くなりますので、価格が高くなっていくことがないわけです。
なお、このような商習慣(更地の方が高い)は、日本独特の風習と言われています。例えば、アメリカなどで考えれば、国土が非常に広く、現在でも土地が余っている場所が多いので、更地には高値が付きにくいと言われています。アメリカでは、『建物があってこそ』その不動産は価値があるとみなされているようです。
不動産を更地にする判断基準について
日本国内では不動産の用途が多様化することから、更地に高値が付きやすいと聞くと「全ての不動産は更地にした方が良いのでは?」と感じてしまいますよね。しかし、一概にそうとは言い切れないのが不動産売却の難しさなのです。
一般的に、不動産を更地にした方が良いと言える基準は『建物の価値がなくなった時』と考えてください。なお、ここでいう『価値』は、単なる値段ではありません。
どのような物品も、使用していれば劣化して使えなくなっていきますよね。例えば、日常生活の中で使用する家電製品にも耐用年数があるのですが、実は皆さんが毎日過ごしている家そのものにも耐用年数が設定されているのです。なお、耐用年数は「=寿命」と言ったイメージを持っている方がいるのですが、家の耐用年数は寿命ではないので注意してください。
日本では、戸建て住宅のほとんどが木造住宅になるのですが、木造住宅の法定耐用年数は22年に設定されています。そして、不動産売買の業界では、木造戸建て住宅は築20年でその価値がゼロになると判断されるのです。もちろん、価値がゼロになるからと言っても、今どきの木造戸建て住宅は築20年を過ぎても何の問題もなく住むことができます。つまり、築20年周辺の戸建て住宅については、買い手側から見ると「建物の価値がゼロなので、更地の価格(土地の価格)で土地と建物を購入できるお得な物件」とみなされるわけです。前述したように、築20年であれば、価値はゼロとなっていても十分住むに耐える状態ですので、取り壊さなくても買い手が付く可能性は普通にあると考えられます。
しかし、これが築30年を超えてくると、建物の価値がないだけでなく、「さまざまな劣化が表面化している」とみなされるようになります。特に、昭和56年6月以前に建てられている家(築35年以上)であれば、旧耐震基準で建てられていますので、耐震性能も劣ると考えられます。したがって、ここまでくると、建物をそのまま残した状態であれば、買い手からすると「購入しても、最初に解体費もしくは大規模リフォームの費用がかかる」と考えられ、手を出しにくいと思われてしまうのです。
ここまでの説明で分かるように、木造戸建て住宅の売却は、築20年まではそのまま売却を目指すのがおすすめで、築30年を超えてくると、解体しないと買い手が見つからないと考えましょう。なお、築20~30年の間にある家は、建物の状態によります。
取り壊さない方が高値で売れる場合もある!
上述のように、木造住宅であれば、築20年までならそのまま、築30年を超えると更地にするという選択肢がオススメです。ただし、近年では、『古民家ブーム』というものがありますので、物件によっては築年数が30年を超えていても、建物が存在したほうが高値売却が目指せることがあります。
皆さんも、「古民家カフェ」や「古民家ヨガ教室」などという用語を耳にしたことがあると思うのですが、古民家が持つ独特な雰囲気がカフェや民宿などの事業に適しているとされていて、わざわざ古民家を探して購入するというケースもあるのです。なお、古民家を商業施設として利用する場合、リフォームが前提になりますので、多少悪い箇所があったとしても何の問題もなく購入してもらえるという点も大きなメリットになります。ただし、古民家カフェなどの商業目的になると、立地条件が非常に重要になりますので、「田舎の古い民家」などになると、なかなか難しいものです。基本的には、大阪や東京などの大都市圏で、その中でも若者が集まるようなオシャレゾーンにある築古物件が対象となっています。
なお、木造ではなく、鉄筋コンクリート造の物件などは、築30年程度ならまだ十分に使える物件ですので、取り壊さなくても売却が目指せると思います。
不動産を更地にするメリット
それでは最後に、不動産売却を検討した際、その物件を更地にしてから売りに出す場合のメリットについて簡単に解説しておきましょう。ここでは、更地にするデメリットに関しても簡単に触れておきます。
更地にするメリット
まずは「更地にするメリット」からです。
上述しているように、建物が建っている土地よりも更地の方が利用用途が多い事から、購入希望者が増えると予想でき、より早期に高く売却できる可能性があるという点が更地にするメリットでしょう。
築年数がかなり経過して利用価値がないとみなされる建物が存在する不動産は、古家付き土地として売却されるのですが、この場合「更地価格-解体費用」で査定されてしまうことになります。つまり、このような物件の売却は、理論上、売主が解体しても、買主が解体してもお金の面では違いがないのです。しかし、この解体費用というのは、通常ローンを組むことができませんので、買主が負担する場合、家を建てるために「持ち出しの費用が発生してしまう」というデメリットが生じてしまいます。物件としては安く購入できるとしても、家を建てるために、キャッシュで100万円以上のコストが必要になり、これをポンと出せる人などなかなかいないわけです。したがって、古家付きの物件というのは、一般の消費者からは敬遠されてしまう傾向にあり、なかなか買い手が見つからない…となってしまうのです。
なお、こういった古家付き土地に関しては、不動産会社が直接買取りするというケースが多くなります。法人である不動産会社であれば、戸建ての解体費程度なら普通に出せますし、自己資金で不要な建物を解体し、更地にして転売をするわけですね。なお、不動産会社に買取してもらう場合、解体費にプラスして、不動産会社の転売益も査定額から引かれるというデメリットがあります。ただし、売主としても、解体費をキャッシュで用意するのは難しい…という場合には、非常にありがたい存在になるはずです。
更地にするデメリット
更地にする場合のデメリットに関しては、解体費用を自己資金で負担しなければならないという点です。要は、売却によるお金を手に入れるために、相当なお金をかける必要があるということです。一般的な建物の取り壊し費用は以下のような感じです。
- 木造住宅の場合・・・坪4~6万円
- 鉄骨造の場合・・・坪6~8万円
- 鉄筋コンクリート造の場合・・・坪8~10万円
例えば、30坪程度の木造戸建て住宅の場合であれば、120万円~180万円程度の解体費用がかかってきてしまいます。なお、建物の解体費用は、立地条件によってかかる費用が大きく変わるので注意しましょう。例えば、対象地までのアクセスが悪く、何人もガードマンを用意しなければいけない、お隣との距離が近く、厳重に養生が必要など、工事の条件が悪ければ、その分費用が嵩んでしまいます。したがって、解体費の見積りをとって、あまりに高い場合は、建物を残したまま買取業者に売却する方が良いでしょう。
他にも、建物を解体すると、固定資産税が高くなるので、早期売却が出来なければ、不動産を所有する際の維持コストが高くなってしまう点もデメリットです。こういった点を考えると、転売益を差し引かれるにしても、建物を残したまま買取業者に売却するのが正解かもしれませんね。
まとめ
今回は、不動産売却を検討している方が、迷うことが多い「更地にした方が良いのかな?」という問題について解説してきました。
この記事でご紹介したように、「不動産は更地にした方が高く売れる」という情報があるにしても、それは物件の条件によって正解でもあり不正解でもある情報と考えてください。世の中には、たくさんの不動産が存在しており、それぞれの物件ごとに条件や特徴が全く異なるのが実情です。したがって、全ての不動産が更地にした方が良いというわけではなく、比較的新しい物件であれば、建物があったほうが確実に高値が付くと言えるのです。
なお、仲介による不動産売却は、そこに住むことを検討している一般消費者が相手になります。したがって、売却時の条件として、「解体費分を値引きして」「売主負担で解体して」「リフォーム費を負担して」など、さまざまな条件を付けられる可能性があります。不動産買取の場合、こういった面倒な条件交渉などが無いので、できるだけ早く売却を完了させたいときには、不動産買取業者に相談するのがオススメです。