古い家の売却はリスクがある?家を解体して売却する方法が正解ともいえない…
少子高齢化が進む日本では、年々増加する『空き家』が社会問題ともなっています。「マイホームを手に入れる!」という事は、人生の目標の一つでもありますし、いずれは新築戸建て住宅を手に入れたいと考えている方が多いのではないでしょうか?しかし、日本人の多くが『新築住宅』に憧れを持っている裏には、誰も住んでいない『空き家』がどんどん増加しており、管理の手が回らないことから、周辺環境にも悪影響を与えてしまう…なんてことが増えていると言われています。
こういった状況もあり、親との同居を契機に、古くなった実家の売却を検討して売りに出したとしても、何年も買い手が付かず、誰も住んでない家のために固定資産税や維持管理費用など、支出ばかり嵩んでしまうことに頭を悩ませてしまう…という方が多くなっています。こういった状況に陥ってしまった場合、ネットで調べてみると「古い家が建っているから買い手が付かない」なんて情報を見かける事が多いと思います。上述したように、日本は、多くの中古住宅が余っている状態でも、新築住宅を求める方が多い傾向にありますし、古い家が建っている土地をわざわざ購入したくない…という心理が働いてしまうのでしょう。よって、状態の悪い古い家が建っている土地は「家を解体してから売りに出した方が買い手が付きやすいですよ!」と言った視点での意見ですね。
購入してもそのまま住めない、購入者がまずは解体費用を支払わなければならない…なんてことになると、確かにそのまま売却することは難しいですね。しかし、ここで安易に建物を解体したからと言って、すぐに買い手が付くかというとそういうわけではないのです。そこでこの記事では、古い家を売却するための一つの手法となっている「更地にして売る」について、家を解体することのリスクなどを簡単にご紹介していきます。
古い家として売却はできないものなの?
古い家が建っている状態だからといって、絶対に売却できない…というわけではありません。東日本不動産流通機構(レインズ)が公表した「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2018年)」のデータを見ても、築30年を超えるような中古住宅の成約件数はそれなりの数になります。
なお、土地を購入した後に、解体することを前提などとして売却する場合は『古家付き土地』として売りに出すことになります。『古家付き土地』という用語については、そこまで複雑な物ではなく、そのまま「古い家が建ったままの土地」のことを指しています。不動産の広告などを見てみると、「土地」や「中古住宅」などという名目で売りに出されている物件をよく見かけると思うのですが、中には価値がつけられないような古い家が建っているという場合もあり、そのような物件は「古家付き土地」と分類され、基本的に土地の価格のみで売買されることになります。なお、「土地※現況古家あり」という表記になっている場合もあるので注意して下さい。
『古家付き土地』に関しては、「築〇年以上の家が建っている=古家付き土地」と言ったような明確な定義はないのですが、家の劣化状態や居住性能などによって総合的に判断されます。こういった家に買い手が付くのは、古家の取り扱いは自分で決めることができ、DIYなどが趣味で自分で古家をリノベーションして住みたいという方や、しばらく住んで、将来的には建て替えを検討しているという方が安く家を手に入れられるという点がメリットと考えられるからです。要は、土地の立地などによっては、わざわざ解体しなくても売却することができるかもしれないということです。ただし、古家の売却は大きな落とし穴もあるのでその辺りは理解しておきましょう。
『古家付き土地』で売却する場合のリスク
売り手からすると、解体などをすることなく、古い家がそのまま売れるというのは非常に大きなメリットなように思えます。いらない家を余計な手間をかけずに売れるというのは非常に魅力的ですし、解体するぐらいなら『古家付き土地』と売りに出したいと考える方は多いと思います。
しかし、解体の手間や費用をかけなくて良いといった感じに、売り手に大きなメリットがありそうに見える取引ですが、『古家付き土地』での売却は売り手にも大きな落とし穴があります。
- そもそも買い手が付きづらい
まず挙げられるデメリットとしては、『古家付き土地』では基本的に買い手が付きにくい…という点です。家の購入を検討している方でも、『古家付き土地』を狙っているという人は稀で、建物ではなく土地を求めているという場合がほとんどなのです。土地を探している方は、そこに新築を建てたいという人ですし、購入しても最初に解体費用が発生してしまう…という条件は非常に大きなデメリットになってしまいます。使わない家の解体にお金をかけたくない…というのは買い手も同じですし、売りに出してもなかなか売れなくて余計なコストばかりかかってしまう…という結果になりかねません。なお、古家が建ったまま売りに出した場合、その家の解体費用分の値引き交渉は必ずされると考えておいた方が良いですよ。 - 売却後に売主責任を問われてしまうかも
『古家付き土地』での売却は、売却後に瑕疵担保責任(契約不適合責任)を問われてしまうリスクがあります。「家として使わないのに何で?」と思うかもしれませんが、買い手が解体工事を進めてから、何らかの埋蔵物が見つかってしまった…という場合、それを買い手に伝えていなければ契約不適合責任を問われてしまうのです。法定耐用年数以上の古家の場合、建物に関する瑕疵は免責になることもあるのですが、埋蔵物などに関しては瑕疵として撤去費用などを求められてしまうケースが考えられます。最悪の場合、損害賠償や契約解除などに至ることも考えられます。したがって、後から契約不適合責任を免れるためには、売買契約時にしっかりと取り決めを行っておかなければならないと考えてください。そういった交渉ややり取りが面倒に思う場合、更地にして売却してしまった方が安全です。
『古家付き土地』での売却は、売主にとってメリットだけでなくデメリットも存在するということがわかりましたね。そのまま売却できれば、解体費用の負担はない…と思うかもしれませんが、ほとんどの場合、解体費用分の値引き交渉はされてしまうので、メリットとしては「手間がなくなる」という程度でしょう。ただし、手間を嫌ってなかなか売却できない…なんて状況になってしまうと、税金などが嵩んでしまうことになるため、「解体して更地で売却」という選択をする方が多くなるわけです。
買い手からしても、最初から更地であれば、すぐに新築の建築に入れるというメリットがありますので、買いやすい物件になると考えられます。また、更地にしておけば、後から瑕疵を指摘される心配も少なくなります。
関連記事:民法の改正により売主責任が変わった!?契約不適合責任は瑕疵担保責任と何が違うの?
『更地』にする注意点
ここまでの説明で分かるように、古家が建っている土地であれば、解体して『更地』として売却する方がメリットが大きいように感じますね。そもそも土地を探している方は、新築を建てたいために探しているわけですので、土地の購入後すぐに建築に入れる条件の方が適しているのは当たりまえです。そうなると、相続した古い家が建っている土地は「解体して売りに出す!」という選択が正解のように思えますよね。
ただし、古家を解体して更地にする場合もいくつかの注意点が存在しますので、その辺りがおさえておかなければいけません。
まずおさえて押さえておきたいのは、古家を解体して『更地にした』からと言ってすぐに買い手が付くような時代ではないということです。相当立地に自信があるという場合は別ですが、冒頭でご紹介したように、空き家の増加が社会問題となるほどの日本の状況ですから、「解体すれば売れる」と安易に考えない方が良いですよ。解体したのに売れない…なんてことになると、解体にかけたコストを無駄にするだけでなく、下で紹介する税金の負担増が重くのしかかります。
家を売却するためとはいえ、「使わない建物を解体する」という目的で多額のお金をかけなければならない…というのは非常に大きなデメリットと言えるでしょう。解体費用に関しては、後述しますが、30坪程度の家でも100万円以上の出費になってしまいますので、なかなか頭の痛い問題になるでしょう。
これを見落としてしまう方が多いです。住宅用地は、税負担の軽減のため手厚い特例措置が設けられているのですが、更地(非住宅用地)に関してはこの特例がありません。要は、家を解体して更地にしてしまうと、今まで受けていた固定資産税の減額特例措置が受けられなくなることから、税負担額が大きくなるわけです。「どうせ大した額ではないでしょ!」などと考えるかもしれませんが、小規模住宅用地の固定資産税は、特例により『1/6』となっていますので、更地にすると今までの6倍の税額になってしまいます。つまり、更地にしてすぐに売れた…という場合は良いのでしょうが、更地にしても買い手が付かない…なんてことになれば、毎年多額の固定資産税を支払う羽目になるのです。
このように、古い家の売却は、安易に「解体して更地にすれば良い」と考えるのは大間違いなのです。最悪の場合、100万円以上のコストをかけて毎年の税額を高くしてしまうだけ…と言った感じになってしまいます。
家の解体にかかる費用について
それでは最後に、古家を解体しようと思った時にかかるコストについても簡単に触れておきます。解体費用に関しては、お願いする業者や家のある場所、家の構造などによって必要な費用が異なります。ここでご紹介する費用は、あくまでも一般的なものですの、参考程度に考えて下さい。実際にかかるコストに関しては、近くの解体業者などに見積もりを出してもらうようにしましょう。
まずは以下に、建物の大きさと構造から、予想できる一般的な解体費用を上げていきます。
・30坪程度の木造一戸建ての解体費用・・・90万円~
・50坪程度の木造一戸建ての解体費用・・・150万円~
・80坪程度の木造一戸建ての解体費用・・・240万円~
・30坪程度の木造一戸建ての解体費用・・・120万円~
・50坪程度の木造一戸建ての解体費用・・・200万円~
・80坪程度の木造一戸建ての解体費用・・・320万円~
・30坪程度の木造一戸建ての解体費用・・・150万円~
・50坪程度の木造一戸建ての解体費用・・・250万円~
・80坪程度の木造一戸建ての解体費用・・・400万円~
このように、家の解体はかなりの費用がかかってしまうと考えておいた方が良いです。この費用をもったいない…と思っても、廃材の搬出や家の解体後の整地など、とても素人にできるような事ではありません。「家を売るため」と考えて、致し方ない費用と考えなければいけませんね。
条件によっては上記以上の費用がかかることも
当たり前のことですが、解体作業の難易度は、それぞれの家によって異なります。例えば、住宅密集地で大きな重機が利用できない…なんて場合、解体作業が難しくなるだけでなく、解体に係る期間も長くなりますので、総額の解体費用も高くなってしまうと考えてください。
他にも、カーポートの撤去やブロック塀の撤去、庭木の撤去などによって解体にかかるコストが変わってきます。また、築年数が経過した古い家の中には、屋根材にアスベストが含まれているような場合もあり、その場合は、解体のための特殊な養生が必要になるうえ、廃材の処分費も高くなってしまいます。この辺りは、実際に作業を依頼する業者が判断してくれますが、上述した相場よりも高い見積りになっていた場合、「どこに費用がかかっているのか?」はしっかりと確認しておきましょう。
解体するぐらいなら不動産買取がオススメ
今回は、古い家の売却を検討した場合、解体して更地として売りに出すのが本当に正解なのかをご紹介してきました。空き家問題が深刻化している現在の日本では、売りに出してもなかなか買い手が付かない…と考えられるような古い住宅の処分に困ってしまっている方も多くなっています。家は、住んでいようが住んでいまいが、所有者に管理責任が生じてしまいますし、税金の支払いも必要です。つまり、使っていない家というものは、支出だけが嵩んでしまうお荷物物件になってしまう訳ですね。
そうはいっても、古い家が建った状態の土地は、売りに出したとしてもなかなか買い手が付きにくいのが現状で、うまく売れたとしても後から売主責任を問われてしまう場合があるのです。こういった理由もあり、「古家付き土地」でなかなか家が売れない場合は、解体して更地として売りに出せば良いという情報がネット上に出回っているのだと思います。
新築を建てるために土地を探している方からすれば、すぐに建築に移れる方がありがたいですし、家を解体して更地として売却を試みる方が「売れる可能性が高くなる」のは確かです。しかし、古家の解体は、あくまでも土地が「売れやすくなる」というだけで、必ず売却できるようになるわけではないのです。そして、解体したものの買い手が付かない…なんてことになると、「100万円以上のお金をかけて税金を高くする!」などという意味不明な状況になってしまう訳で、家の解体にはかなりのリスクも存在するということを忘れてはいけません。
そこでオススメなのが、「なかなか買い手が付かない…」と悩むような古家付き土地の場合、不動産買取に出すという手段です。不動産買取は、不動産会社に直接物件を買い取ってもらうという手法で、仲介よりは買取価格が安くなる…なんてことがデメリットとされています。買取が仲介よりも価格が安くなるのは、不動産会社は買い取った家をリフォームなり建替えなりして再販することが目的で、そこにかかる費用があらかじめ差し引かれているからです。
ここで考えてほしいのは、古家付き土地として仲介に出した場合でも、「解体費分は値下げ交渉される」と解説しましたよね。要は、これと全く同じで、不動産買取の場合は、最初から正直に自分たちがかけるコストを差し引いているだけなのです。つまり、一般消費者に売却を試みても値下げ交渉されるわけですので、買取に出してもそこまで売却価格は安くならない場合も多いわけです。
その上で、不動産売却の場合、業者が提示する価格に納得できれば、その場で家を手放すことが決定します。要は、その後の固定資産税の支払いや家の管理の手間なども一切なくなるわけです。仲介の場合、売れない家は、何年も売れ残ってしまうものですし、売れ残ることで発生する税金などを考えると、手っ取り早く売却できる『不動産買取』という選択が最も正しいと考えられるのではないでしょうか!