空き家の災害対策はしていますか?できていないなら売却したほうが良いかも!
以前「日本の空き家問題が深刻化!そもそも空き家は所有者にもさまざまなリスクが存在します!」という記事の中でもご紹介していますが、少子高齢化による人口減少や、新築信仰のような考えがある日本では、年々増加する空き家が社会問題となっています。コロナ禍で、マンション暮らしの方が戸建てへの住み替えを希望して、首都圏などでは中古戸建て住宅が不足し始めた…などと言ったニュースも最近報道されていますが、これらはあくまでも状態の良い中古住宅が売れているだけで、長年人が住んでいない空き家になると、そう簡単には売却できない…という状況は変わっていません。
それでは、実家を相続した…、親と同居することになって誰も住んでいない空き家を所有することになったなど、空き家を所有している方は、その家の管理をしっかりと行っているでしょうか?特に、台風や地震などの自然災害が多い国として有名な日本ですが、最近では夏場の集中豪雨などによる水害が頻発しているなど、空き家の災害対策が非常に重要になっていると言われています。実際に、今年も九州地方で発生した水害では、放置空き家が被災したことから、その後の対応で近隣住民が困っている…といったような話も出てきています。
そこでこの記事では、空き家の災害対策を怠ってしまった場合に考えられるリスクや、実際に空き家を所有している方がどの程度の割合で災害対策を検討しているのかについて解説したいと思います。
被災した空き家が問題となっている
日本は『災害大国』などと揶揄されることもあるほど、さまざまな自然災害の危機が身近にある国として有名です。特に、台風に関しては昔からいくつかの台風が必ず日本を上陸しますし、地震に関しても阪神大震災、東日本大震災、熊本地震などと、定期的に巨大地震が発生し、甚大な被害を私たちにもたらせています。さらに近年では、気候変動などの影響からか、夏場のゲリラ豪雨や集中豪雨などによって、水害が頻発するようになっています。実際に、ここ数年「100年に一度の大雨」と評されるようなことが毎年のように発生しており、今年も九州地方では大雨により甚大な被害が生じています。
このような自然災害は、人が住んでいる住宅にも被害を生じさせるのですが、災害からの復旧を妨げてしまうのが空き家の増加だと言われるようになっているのです。
実は九州地方は、昨年の7月にも大雨による被害が生じていたのですが、この際にも、空き家が被災したことから近隣住宅に悪影響を及ぼすようになっているという報道が出ています。というのも、水害は、河川の氾濫などで、住宅に土砂などが流入する…という被害が生じてしまいます。そして、災害の後に、住民は自分の家から土砂をかき出したり、ゴミを撤去したりという作業を行うことになるのです。水害があった後には、そういった清掃作業をしている住民の映像などがテレビでも放送されていますし、迅速に対処されているのだろと考えている方が多いと思います。
しかし、空き家が被災した場合、「誰が復旧作業を行うのか?」ということが問題になり、数カ月以上放置されてしまう…なんてことも珍しくないのです。昨年九州で発生した水害でも、空き家が水没した…という事例があったようですが、この際には、空き家の所有者が特定できない…、特定できても遠方に住んでいて片付けになかなか来れない…などという理由で、数カ月間被災した状況のまま放置されてしまう…ということが頻発していたそうです。
そして、片づけを放置された空き家では、景観や衛生面の悪化を引き起こし、近隣住民に多大な悪影響を与えていたそうです。河川が氾濫し、家に流れ込んだ土砂は、汚泥を含んでいますし、放置すると虫の発生や悪臭の原因となってしまいます。さらに、近隣住民は、空き家の所有者を特定し、現状の写真を同封して文書で対応を促すなど、自分たちの家の片づけを行う横で、余計な手間までとられてしまうという問題があるのです。
他にも、2019年9月に大型台風で被災した千葉県館山市では数十戸の空き家が破損した状態で取り残されたままで、いつ瓦などが飛ばされて、二次被害が生じるか分からない…と近隣の方が危険を指摘しているという情報もありました。
このように、放置空き家が増加している中、台風の大型化や水害の増加なども重なり、今後、被災した空き家がその地域に多大な悪影響を出す…ということが増加していくのでは…と予想されています。
参考:日経新聞ネット記事より
被災した空き家を放置したらどうなる?
総務省の住宅・土地統計調査によれば、2018年時点での全国の空き家は約850万戸に上り、20年前に行った調査から1.5倍程度まで急増しているそうです。さらに、野村総合研究所が行った予測では、空き家対策特別措置法施行後の解体ペースで進んでも、2038年には空き家の件数は、日本の全住宅の約2割になる1340万戸にもなると言われているのです。
こういった空き家に関しては、所有者が近所に住んでいるわけではない…というものも多く、上述したような水害で被災したとしても、すぐに片付けに動くということも難しいという実情もあります。さらに、自治体に関しても、「住人のいる家の復旧を最優先しており、空き家の対応まで手が回っていない」という状況になってしまうことから、何カ月も放置され、悪臭を放ったり、倒壊の危険が生じてしまったりするわけです。それではこのような状態になった空き家に関しては、所有者に何のリスクもないのでしょうか?実はそうではないのです。
現在、放置空き家が深刻な社会問題となっており、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家特別措置法)」が制定されています。そしてこの法律によって、以下のような住宅は特定空き家に指定されることになるのです。
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態の空き家
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態の空き家
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態の空き家
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態の空き家
特定空き家に指定されてしまうと、『建物が建っている宅地に関して、特例として「固定資産税」と「都市計画税」が大幅に軽減される(減額率は固定資産税で最大1/6、都市計画税で最大1/3)』という住宅のメリットがなくなります。要は、毎年支払わなければならない税金が最大6倍にまで跳ね上がってしまう訳です。
さらに、近隣の景観を著しく壊す…、悪臭などで近隣住宅に大きな被害をもたらす…などと言った場合、自治体による強制執行(解体)が行われることになり、解体にかかった多額の費用を有無を言わせず請求されてしまうのです。もちろん、強制執行をされるまでには、いくつかの段階が踏まれますが、この部分は空き家所有者の大きなリスクとなるでしょう。
空き家の災害対策の現状
ここまでの説明で分かるように、日本国内で空き家を所有するということは、常に自然災害による被害に備えておかなければならないということです。台風や集中豪雨などは夏から秋にかけてと、ある程度シーズンが限られていますが、地震に関しては「いつ・どこで」起こるのか誰にも分らない…のが現状ですし、空き家の所有者は、常に空き家の災害対策のことを頭の片隅に置いておく必要があるわけです。
それでは、現在空き家を所有している方については、本当に災害対策を行っているのでしょうか?実は、空き家の災害リスクを認識しているものの、災害対策をきちんと行っているという方は半分に満たない…というのが現状だと言われています。ここでは、ある企業が行った調査データを引用してご紹介しておきます。
空き家所有リスクの意識と防災対策の実態
上記は「想定されるリスクに対し、これまでどの程度意識していましたか?(左)」と「所有する空き家のリスクに対し、防災対策していますか?(右)」という質問に対する回答をグラフ化したものです。
この調査から分かるように、空き家所有者の方の多くは、空き家を所有する際にさまざまなリスクが存在するということは理解しているようです。ただし、リスクがあるということは理解しつつも、その対策のために何らかの準備をしているのかという質問に対しては、「対策をしている」との回答は、半分にも満たない約4割という結果になっています。さらにこの「対策をしている」と回答した人の年代を見ると、30代の方では約8割(75.0%)が対策をしていると答えているのに対し、50代以上では約3割(32.7%)と対策がおざなりになっている…という結果が出ています。
なお、具体的に行われた対策に関しては、「建物の状態を確認・点検した(68.0%)」、「保険に加入した(地震・火災)(65.5%)」といった回答が多かったようです。
防災対策が行えないなら売却するのがオススメ
ここまでの説明で分かるように、空き家所有者の多くは、自然災害や悪意を持った第三者の侵入など、所有物件にさまざまなリスクが存在するということは理解しているようです。しかし、そのリスクを認識した上でも、半数以上の方は何の対策も行っていない…というのが実情です。
これに関しては、有効な対策が「建物の点検をして劣化部分を補修する」だとか、「万一の備えて保険に加入する」などと言った感じで、対策のためにそれなりのコストがかかってしまう…という点が非常に大きな要因になっているのだと考えられます。また、遠方に住んでいる方も多く、自分で物件の状態をチェックすることが物理的に難しい…なんて理由も考えられます。
要は、人が住まない空き家に関しては、適切に維持していこうと思えば、手間もお金もかなり掛かってしまうということです。どのような状況でも、所有していれば固定資産税などの税金が課せられますし、災害などへの備えを考えると、保険への加入も必要になります。さらに、実際に被災した時には、その状況確認や建物の掃除、片付けと、かなりの労力がかかってしまいます。現在、全国で放置空き家が増えているのは、年齢の問題や距離の問題で、こういった労力をかけられなくなっている…というのが大きいのだと思います。
したがって、空き家を所有している方で、物件の管理や災害対策を行えない…なんて場合、早期の売却を検討するのがオススメです。売却してしまえば、税金の支払いも、災害時のリスクなども一切なくなりますので、空き家のことで悩まされることがなくなると思います。
なお、古くなった空き家であれば、仲介に出しても買い手が見つからない…なんてことも珍しくありません。その場合、弊社のような不動産買取業者に相談してみるのがオススメですよ。不動産買取は、訳あり物件でも高値買取していますので、「この物件はちょっと売れないかな…」と思っていたものが、予想外の高値で売れるなんてことも多いです!