瑕疵のある不動産の売却について。実際のところ、瑕疵の有無で家の価値はどれだけ下がるのか?
今回は、不動産の売却を考えた時、家の価値が大幅に低下してしまうと言われるさまざまな『瑕疵』について、実際のところ、瑕疵の有無によってどの程度売却価格が変わってしまうのかについて解説していきたいと思います。
住宅における『瑕疵』とは、シロアリ被害や雨漏りなどを抱えた欠陥住宅、過去に自殺や殺人が起きた事故物件、周辺に住環境を壊すような問題施設があるなど、そこに住むことにストレスを抱えてしまうような問題点のことを指しており、こういった瑕疵を抱えた物件は『瑕疵物件』などと言われます。そして、瑕疵物件は、売りに出したとしても、その需要の低さや問題を解決するための補填などを理由に、価格相場が通常の不動産よりも低くなってしまうのが一般的です。
実際に、瑕疵の内容によっては、市場相場の20%程度の価格しか付かない…なんてケースもあり、売主としては「こんな価格では売りたくない…」と考えてしまうことも珍しくありません。なお、売却時に「瑕疵はない」と報告して高値で売ってしまおうと考えるような方もいるのですが、売却後に瑕疵の存在が発覚すると、契約不適合責任を指摘され、損害賠償問題にまで発展するので、瑕疵の隠ぺいなどは絶対にしてはいけません。
この記事では、一般的に瑕疵物件と呼ばれる家の売却で、瑕疵の種類によって売却額がどれほど下がってしまうのかを簡単にご紹介します。
瑕疵の種類と売却相場について
それでは、何らかの問題点があると指摘された、いわゆる『瑕疵物件』について、その住宅を売却しようと思った際に、相場よりもどの程度価格が低下してしまうのかをご紹介していきましょう。「高く売りたいから瑕疵を隠蔽しよう…」と考える方もいますが、瑕疵物件の売却は、あらかじめ住宅に存在する瑕疵を全て買主に告知しないといけないと定められています。要は、瑕疵物件は、瑕疵を告知したうえで「それでも購入したい」と判断するような人がいて、初めて売却が成立するわけです。
現在の日本は、住宅の供給過多が指摘されているような時代ですので、買い手側はさまざまな選択肢の中から自分の希望に近い家を選ぶことができます。つまり、代替案がたくさん存在するわけですので、わざわざ瑕疵があると告知されるような家を購入しようと考える人は非常に少ないです。こういった需要の低さから、瑕疵物件の売却価格が安くなる傾向があるわけです。
なお、一口に『瑕疵物件』と言っても、その家が抱えている問題については、以下の4種類が存在していて、どの瑕疵が存在するのかで売却価格は変わります。
- 物理的瑕疵
- 法的瑕疵
- 心理的瑕疵
- 環境的瑕疵
ここではまず、瑕疵の種類ごとの売却相場価格を簡単にご紹介しておきます。
物理的瑕疵について
物理的瑕疵は、建物の性能や品質に関わる不具合のことを指しています。主に建物構造と防水に問題がある際に、物理的瑕疵があると判断され、その家の売却価格は、市場価格の約20~30%まで下落してしまいます。
「物理的瑕疵=家に存在する傷」などと理解している方の中には、クロスに汚れが付いていたり、フローリング材に傷が入っていることを指摘し、物理的瑕疵があると判断したりします。しかし、こういった日常生活のなかでしょうがなく、かつ経年で生じてしまうような劣化は物理的瑕疵に含まれません。
一般的に、建物の売却価格が下落してしまうような物理的瑕疵は、以下のような問題点が存在するケースです。
- 雨漏りがある
- 壁内の水道管で水漏れが確認される
- シロアリ被害がある
- 基礎のひび割れ
- 外壁やバルコニーから水漏れがある
上記のような問題が存在する住宅は「物理的瑕疵が存在する」と判断され、一般的に市場価格の20~30%程度で取引されることになります。
特に、物理的瑕疵の中でも構造材に関わる(シロアリや基礎の劣化)瑕疵は、家の価値が著しく下がってしまいます。もちろん、こういった瑕疵を補修し売りに出せば、市場価格に近い金額で売却できるようになるのですが、補修に多額な費用がかかってしまうと、売却できても赤字になってしまった…なんてこともあるので注意しましょう。
法的瑕疵について
住宅の瑕疵の中では、あまり聞き馴染みが無いものかもしれませんね。法的瑕疵とは、その住宅が都市計画法や建築基準法といった法律に違反していると判断される物件です。この場合、売却価格は、市場相場の約50%になると考えておきましょう。
具体的な瑕疵の事例を以下に上げておきましょう。
- 接道義務が守られていない
- 旧耐震基準のままなど、構造上の安全基準が国の基準に達していない
- 「市街化調整区域内」の物件
- 「計画道路指定」で建築制限を受けている
このような物件は、法的瑕疵があると判断され、売却価格が下落してしまいます。なお、状況によっては、相場の50%も付かないようなこともあるようです。
法的瑕疵のある家は、買主が住宅ローンを組めないケースがほとんどです。これも、売りに出しても買手が見つからない…となってしまう要因の一つです。
心理的瑕疵について
心理的瑕疵は、いわゆる事故物件と言うもので、過去に自殺があった、殺人事件があった、孤独死があったなど、購入者がそこに住む場合、心理的なストレスを感じてしまう物件のことです。こういった事故物件は、心理的瑕疵の内容によって、相場の50~90%程度の価格になります。
心理的瑕疵の具体例は以下のような物です。
- 前の住人が物件内で自殺した
- 物件内で殺人事件が起きた
- 物件内で孤独死した(発見が遅れて特殊清掃が必要になった場合)
- 過去に部屋内で火災が発生していた
心理的瑕疵については、買主がどう感じるのかが価格に影響を与えるものですの、同じ物件でも価格に誤差が出てしまいやすいです。したがって、上述したような「50~90%程度」という感じで振り幅が非常に大きくなってしまう訳です。
特に、孤独死などに関しては、少子高齢化が進む日本では特に珍しい事ではありません。老衰で亡くなるというのは、ある意味自然の摂理ですし、単に前の住人が孤独死したという事実だけなら、瑕疵として告知する必要すらないとされています。ただし、発見が遅れてしまい、特殊清掃が必要になったというケースに関しては、心理的瑕疵に含まれるとされています。
心理的瑕疵に関しては、判断が難しい部分があるので、国のガイドラインなども確認しておきましょう。
参考:宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
環境的瑕疵について
最後は『環境的瑕疵』です。環境的瑕疵は、建物や土地そのものには問題はないものの、周辺環境に買主が嫌悪感を抱くような施設や人がいるケースを指しています。具体的には、以下のような事例が「環境的瑕疵がある」と判断されるケースです。
- 近隣にゴミ屋敷や騒音問題を引き起こす迷惑な住民がいる
- 線路の目の前で、電車が通過するたびに騒音や振動がある
- 近くにゴミ焼却場、化学工場などがあり、悪臭問題がある
- 周囲に高層マンションの建築計画が立っている
上記のように、物件そのものには問題はないものの、周辺に買主が嫌がる事実があるケースが環境的瑕疵です。このケースは、売主本人では根本的な解決ができないので、売却価格が安くなるのは、なんとなく納得できないと感じてしまうでしょう。ただ、環境的瑕疵に関しては、人によって許容範囲がかなり異なることから、「どこからどこまでを告知すべきか?」が非常に難しいものです。基本的には、環境的瑕疵がある物件は、市場価格の70~80%で取引されるようになるので、不動産会社と「重要事項として告知すべきか?」は慎重に相談しましょう。
瑕疵物件を売却する方法と注意点
ここまでの説明で、瑕疵物件の売却は非常に困難を極めるということがわかっていただけたと思います。ただし、瑕疵物件だからと言って「絶対に売却できない!」というわけではありません。一般的に、瑕疵物件をできるだけ高値で売却するには、以下のような方法があるとされています。
- 瑕疵を解消してから売却する
- 瑕疵物件を解体して更地として売却する
- 不動産買取に出す
瑕疵物件は、「買主がストレスや嫌悪感を感じる」何らかの問題点が存在するという理由で、需要がなくなったり、価格が下がってしまったりします。逆に言えば、その問題点さえ解消してしまえば、相場価格に近い売却価格で売ることも夢ではないのです。
物理的瑕疵の場合は、瑕疵部分の補修を行い、建物状況調査(ホームインスペクション)を実施して「瑕疵が解消されている」という証明ができれば、買主も安心して購入してくれます。また、築年数がそれなりに経過している物件であれば、建物を解体してしまい更地として売却するという方法もあります(土地として売却する場合でも過去の心理的瑕疵の事実を告知する必要はあります)。環境的瑕疵に関しては、売主の努力でどうこうできない問題なので、そのまま売却するしかないと思います。
注意が必要なのは、物理的瑕疵や心理的瑕疵を解消するため、建物の修繕や解体をする場合、売却活動を始める前に、それなりのお金をかけなければならないということです。工事の内容によっては数百万円単位のコストがかかってしまうような場合もありますし、更地にしたからと言ってすぐに買い手が付かない場合、固定資産税が高くなるという点もデメリットです。特に心理的瑕疵は、建物の解体すれば、心理的な負担を軽減することができるかもしれませんが、告知義務は残るので、「多額のお金をかけて解体したのに、売れなくて税負担だけ大きくなる…」なんて本末転倒な結果を招いてしまう危険があります。
こういった注意点を鑑みると、何らかの瑕疵が存在する瑕疵物件については、不動産買取業者に相談するのが最も賢い選択と考えられるでしょう。もちろん、不動産買取業者にも得手・不得手がありますので、瑕疵があるような訳あり物件の買取は断っているという業者も多いです。しかし、その逆に訳あり物件を専門に取り扱っている不動産買取業者もいて、そういった業者は、瑕疵物件の再販先も持っていますので、仲介で売却を目指すより高値で買取りしてもらえる可能性が高いのです。さらに、仲介の場合、訳あり物件は1年以上待っても内覧希望すらない…と言うケースも珍しくありません。物件が売れない間は、維持管理コストや税負担がありますので、いつ売れるか分からない…という状況は、いくら維持費がかかるか分からないという状況と言い換えることができるわけです。
つまり、買取業者に即座に売却すれば、それ以降の維持コストがなくなるので、その辺も考えると、買取業者に相談するのが最も高く売れると言っても良いのではないでしょうか。
まとめ
今回は、売却が難しくなる、瑕疵物件の種類と、実際に売りに出した時、どれほど売却額が下がってしまうのかについてご紹介してきました。この記事でご紹介したように、何らかの問題が生じている物件を瑕疵物件と呼び、このような物件は仲介に出しても、内覧希望すら入らないというのが普通です。現在の日本は、家余り状態になっているので、わざわざ瑕疵物件を買わなくても、状態の良い中古住宅など、そこら中に見つかるからです。
ただし、中には瑕疵物件を専門に探しているような人たちもいて、そういった人に出会うことができれば、相場価格よりは安いものの、売却自体は可能だと思いますよ。なお、瑕疵物件を探す方は、基本的に自分で物件を探すわけではなく、瑕疵物件を専門に取り扱うような買取業者に探してもらっています。そのため、不動産買取業者に相談すれば、瑕疵物件も何の問題もなく売却できるわけですね。