不動産売却時に苦戦してしまう『旗竿地』の基礎知識について
皆さんは、不動産業界で言われる『旗竿地』がどういったものが知っているでしょうか?日常生活の中ではほとんど耳にすることが無い用語で、なんと読むのかすらイマイチ分からない…と言う方も多いかもしれませんね。ちなみに、『旗竿地』は『はたざおち』と読みます。
少子高齢化が進む日本では、親が住んでいた実家を相続することになり、自分は離れた場所に既にマイホームを建てていることだし、相続した不動産の売却を検討するという方も少なくありません。当然、大切な思い出が詰まっている家ですし、誰もが可能な限り高い値段で売却したいと考えることでしょう。しかし、いざ不動産売却についていろいろと調べてみると、実家の土地がいびつだということに気付き、「扱いにくそうだし評価が低くなるのかな…」と気になってしまうケースも多いようです。
実は、こういった土地の形がいびつな不動産が『旗竿地』などと呼ばれるのですが、それではどのような形状なのか、また旗竿地だと高く売ることができないものなのでしょうか?この記事では、『旗竿地』の評価や売却時に知っておきたい基礎知識をご紹介します。
そもそも旗竿地とは?
それではまず、『旗竿地』がどのような形状の土地で、一般的な評価がどうなるのかを解説していきましょう。中には、気付いていないけれど、実は『旗竿地』に該当する家に住んでいるという方も多いと思いますよ。
そもそも旗竿地とは?
旗竿地と呼ばれるのは、上の画像のように、道路(公道)との接地部分が少なく、通路の奥まった場所が家を建てられるほど広い敷地があるといった形状の土地を言います。要は、「竿に旗が付いている」ような形状をしていることから、『旗竿地』と呼ばれるようになったのです。なお、旗竿地のようないびつな形をした土地は不整形地、正方形や長方形のように綺麗な形をした土地が整形地と呼ばれます。
一般的には、土地の需要が高い都市部ほど旗竿地が多くなる傾向にあります。これは、都市部と比較して、土地の需要がそこまで高くない地方であれば、土地を整形に取りやすいのですが、住宅用地の需要が高い都市部では、密集して家が建てられることになるので、余裕を持って整形に取るのではなく、細かく区切ってしまうことから旗竿地が生まれやすくなってしまう訳ですね。
さらに、都市部では、一つにまとまった街として都市を整備・開発していくため、都市計画区域が設けられているケースが多いです。都市計画区域では、家を建てる際は「土地が道路に2m以上接していないといけない」というルールが設けられています。したがって、土地を有効活用するために、道路に一辺も接していない土地については、竿となる敷地延長部分が作られ、その奥にはたとなる家が建てられる土地が用意されるケースが多くなってしまう訳ですね。
旗竿地の評価は?
それでは、一般的に、不動産業界で旗竿地がどう評価されるのかも見ていきましょう。答えから言っておきますが、旗竿地は整形地と比較した場合、その評価は低くなってしまいます。
それでは、旗竿地が不動産業界でその評価が低くなるのはなぜなのでしょうか?実は、以下のような明確なデメリットが存在するからなのです。
- 建物に制限ができる
土地が整形地でない場合、建物を建てる際に、間取りや向きなど建物そのものに制限ができてしまいます。さらに、奥まった土地に建物を建てる際には、建築方法の面でも制限が発生してしまう可能性が生じます。要は、大型機械などを使えないかもしれない…など、整形地よりも困難な場面が予想されるわけですね。 - 実質利用できる面積が少ない
旗竿地の場合、法律に適合するために(土地が道路に2m以上接する)竿部分を取ります。ただ、この竿部分の土地に関しては建物を建てることができないことが多く、全体の土地面積の中で、実質的に使える面積が少なくなってしまう訳です。竿部分は、基本的に通路にしか使えないという用途になることから、家を建てることを考えた場合、無駄になるとみなされるわけです。
旗竿地は、上記のような点がデメリットとされ、整形地と比較すると、その評価が下がってしまう訳です。
旗竿地とにはメリットも存在する
上述したように、旗竿地は整形地と比較すると、どうしてもその評価が低くなってしまうのです。当然、こう聞くと旗竿地に家を建てるのはあまり良くないのだな…と感じてしまう方が多いと思います。しかし、実際には『旗竿地』だということが、不動産業界で致命的なのかと言うとそういうわけではなく、「旗竿地でも問題ない」「旗竿地を探している」と言う方も珍しくないのです。
これは、旗竿地には、その形状ならではのメリットが存在するからです。以下で、旗竿地に存在するメリット面もご紹介しておきます。
メリット1 固定資産税が安い
まず一つ目のメリットは、不動産を購入した場合、必ず課せられることになる、固定資産税が整形地と比較すると安くなるというメリットです。
不整形地である旗竿地は、整形地と比較すると、その資産価値が低くなってしまいますよね。一般的な評価が低いわけですので、資産価値は当然低いわけです。そして、固定資産税は、不動産の評価額から算出されるものなので、資産価値が低くなればその分税額も下がるわけです。
例えば、不動産投資として土地を購入する場合、できるだけ価値が下がらない、その後価値が上がるような資産価値が高い土地が人気になるのでしょうが、そこに住むことを考えた場合、毎年かかってくる固定資産税は安いに越したことはありません。そのため、人気エリアになってくると、そもそも固定資産税が高くなってしまいがちなので、わざわざ不整形地である旗竿地を選ぶ方も少なくないのです。
メリット2 プライバシーを守りやすい
旗竿地は、奥まった場所に建物が建てられます。要は、竿となる通路部分は道路に接しているのですが、建物自体は道路から離れた位置に建てられるわけで、人の目を気にせずプライバシーを守りながら生活できます。
地方の家など、庭付きであれば、道路に面した整形地でも一目はそこまで気になりませんが、都市部では、リビングの目の前がすぐ道路だ…なんてケースも珍しくなく、通行人から窓を通して家の中が丸見えになってしまう…なんてケースも多いです。
その点、旗竿地であれば、道路から少し離れた位置に家が建てられることになるので、通行人などからは家の中や洗濯物などが見えづらくなるというメリットがあるわけです。さらに、音は距離で減退していきますので、車の通行音や人の話し声なども聞こえにくくなり、静かな環境になりやすいです。
メリット3 駐車場を取りやすい
これは、間口に駐車スペースを確保できるという条件が付きますが、その場合、家に使える面積が狭くならないという点がメリットになります。
整形地に駐車スペース付きの家を建てる場合、1階の部屋スペースを潰して駐車場にしたり、家をL字にして駐車場を確保するのが一般的ですね。大阪市内など、住宅密集地になると、基本的に1階部分のスペースを駐車場にするケースがほとんどです。つまり、整形地は、建物のスペースがとりやすいという点がメリットとされるのですが、実際には居住スペースを駐車場のために潰さなければならない場合も多いのです。
これが、旗竿地の場合、間口が駐車スペースとして利用できるようであれば、建物に使用しないデッドスペースを活用できることになり、家を建てられる部分については、面積いっぱい居住スペースに利用できるわけです。旗竿地は、土地の広さに対して建物に利用できる面積が少なくなると紹介しましたが、条件によっては居住スペースを広くとることも可能と言うメリットがあるのです。
旗竿地の売却時に注意しておきたいポイント
ここまでは、不動産市場で旗竿地がどういった評価を受けるのかについて解説してきました。それでは、実際に旗竿地の売却を検討した場合、どういった条件なら高値がついて、逆に評価が低く売れないor安値になってしまう条件について、どこが違うのかをご紹介していきます。
高く売れる旗竿地の条件
まずは、一般的に評価が低いとされる旗竿地なのに、高値で売却することが可能になる条件についてです。分かりやすく言えば、「旗竿地の弱点をどれだけ解消できているのか?」が勝負になります。上述したように、都心部では、固定資産税が安くなるなどのメリットに着目して旗竿地を探している方も意外に多いです。ただ、旗竿地特有の弱点が満載…となると、住みにくくなるので、その場合は目もむけられない…という結果になるでしょう。
基本的に、以下の条件であれば、旗竿地でも高値売却が目指せると思いますよ。
- 間口に幅広い利用用途がある
まずは、竿部分となる間口が広く、単なる通路としてだけでなく、駐車スペースなどとしても活用できるような旗竿地です。この場合、整形地よりも建物の居住スペースを確保しやすくなりますので、実は非常に人気になってもおかしくないと言えるのです。普通車、小型車の駐車スペースとして考えた場合、全長5.5m・全幅3m以上は必要ですが、これがとれるようなら、旗竿地だとしてもネガティブに考える必要はないでしょう。 - 日当たりが良い
一般的に、日当たりが良い物件は、それだけで評価が高くなります。ほとんどの方は、日当たりが悪く、洗濯物が乾かない…一日中暗いなどという条件を嫌いますよね、その逆に、日当たりが良いというのは、賃貸でも売買でも、広告チラシのキャッチに利用されるほどで、誰にとっても人気の条件になります。当たり前のことですが、人気の条件と言うのは、販売価格を高くしてくれます。旗竿地は、基本的に住宅が密集する場所に多いのですが、その状況でもきちんと洗濯物が乾くぐらいベランダなどの日当たりが良いとなれば、人気の物件になることも夢ではありませんよ。
売れにくい旗竿地の条件
上記のように、旗竿地なのに、高値で取引されるケースがある一方、買手を見つけるのが非常に困難…だと考えなければいけない条件の土地も存在します。以下で紹介する条件に適合している旗竿地は、売りに出しても安値しかつかない…、最悪の場合は買い手が見つからないなんてケースになることも考えておきましょう。
- 再建築不可の土地
旗竿地で最も致命的な条件は、「再建築不可」となっている土地です。旗竿地の中には、当時の法律では問題なく住宅が建てられたけど、現在の法律に照らし合わせると家が建てられない土地が意外に多く存在します。このような土地の場合、既存の建物を壊してしまうと、再度家を建て直すことができないわけです。この場合、現在建っている家を改装しながら住み続ける形になり、自分の思い通りの建物を新しく建てることができないので、買手が付きにくくなります。 - 私道を使っている
旗竿地の間口が、私道を使っているという場合も、価格が安くなってしまいます。旗竿地の中には、自分の敷地に行くまでの道が私道になっているケースが少なくありません。なお、近隣の住人とその私道を共有名義で所有しているというケースであれば、不動産の売買時にその権利ごと取引するので、さほど大きな問題になりません。しかし、近隣の人が単独でその私道を所有しているという場合、所有者の意思で私道が使えなくなってしまうリスクがあるのです。このケースも、再建築不可物件と同じく、土地利用などに制限がかかってしまう可能性が高くなるので、評価が大幅に低くなってしまいます。
このように、旗竿地の中には、所有者にとって致命的と考えられるほど悪条件が付いているケースもあるのです。その場合、売りに出しても安値しかつかない…なんてケースが当たり前で、買手すら見つからない…などと言うケースも多いです。
なお、このような条件の場合、再建築不可となっている条件を消すための対策をおこなったり、私道の権利を購入するなど、事前にさまざまな対策をおこなう必要があると考えましょう。
まとめ
今回は、不動産業界で耳にすることがある旗竿地の基礎知識についてご紹介してきました。初めて聞いた言葉だった方も、この記事を見て、自分の実家は旗竿地だ…と思った方がいるのではないでしょうか。
一般的には、旗竿地は整形地よりも取り扱いが難しくなることから、不動産としての評価が低くなってしまいます。ただ、旗竿地特有の弱点を解消できているのであれば、そこまで心配する必要はないでしょう。現在、旗竿地の売却を目指しているけれど、上述したような致命的な悪条件が存在するため、売却することができない…と悩んでいる方は、お気軽に弊社までお問い合わせください。