別荘売却の注意点!マイホームの売却のような税制優遇がない事を知っておこう!

今回は、別荘の売却を検討している方がおさえておきたい注意点をご紹介していきます。別荘についても、普段日常生活を過ごしている自宅と同じ不動産ですし、売却手順や売却後の手続きなど、全て同じだと考えている方も多いでしょう。しかし、別荘の売却は、マイホームの売却に用意されている税制優遇措置が利用できないことから、何も考えずに売却を進めてしまうと、せっかく売却したのに手元にほとんどお金が残らなかった…なんてことになりかねません。

ここ数年、別荘を所有している方の中には、コロナ禍であることもあり、それほど利用しなくなったのに高額な維持管理費がかかってしまうなどと言った理由で、別荘を売却したいと考える方が増加していると言われています。しかし、別荘の売却は、一般的なマイホームの売却とはかなり異なる部分がありますので、事前に別荘の売却手順や売却後に発生する税金についてきちんと把握しておく必要があります。

そこでこの記事では、現在、所有している別荘の売却を考えている方に向け、別荘売却時に注意しておきたい税金上の取り扱いなどをご紹介していきます。

別荘の売却では、マイホームとは税金の扱いが異なる

まず大前提として押さえて起きたいポイントとしては、「別荘の売却は、マイホームの売却時に利用できるような税金の特例がない」と言うものがあります。そのため、別荘に思わぬ高値がついたとしても、節税対策を無視してしまうと、多額の税金が発生してしまい、手元にはほとんど資金が残らなかった…なんてことになるのです。

ここではまず、別荘売却を検討している方が絶対におさえておきたい、税金上の事実についてご紹介していきます。どちらにせよ、別荘を売却する時には、最初から専門家に相談して、計画的に売却を進めていかなければいけないと考えてください。

マイホーム売却に存在する特別控除が使えない

不動産を売却して利益が得られた場合には、譲渡所得税と言う税金が発生します。ただ、売却する不動産が、もともと住んでいたマイホームと言う場合には、譲渡所得税を軽減できる優遇措置が用意されているのです。これは、生活に必要不可欠なものを売却するからという名目なのですが、売却する不動産が別荘だった場合、どうでしょうか?別荘は、生活していく上で、必要不可欠と言えるような物ではなく、あくまでも嗜好の範囲内に収まるものと判断され、これを売却しても税金の優遇措置などは利用できないという考えなのです。

つまり、別荘の売却では、売った時に得られた利益が全く控除されないので、多額の譲渡所得税を課せられてしまう可能性があるのです。以下で、もう少し具体的にご紹介しておきます。

■マイホーム売却時は3,000万円特別控除が使える
まずマイホームの売却を考えてみましょう。例えば、2,000万円で購入したマイホームが、土地の値上がりなどもあり、3,000万円で売れたとしましょう。この場合、マイホームの売却で、1,000万円の利益が発生したことになります。
そして、不動産の売却で利益が発生したとすれば、所得税および住民税が課税され、利益の30~40%程度が税金として持っていかれてしまう訳です。ただ、売却した不動産が、一定期間居住していたマイホームであるという場合、それを売却して得た利益が3,000万円以内であれば、譲渡所得税が発生しないわけです。そのため、マイホームの売却による譲渡所得税は、一般の人にとってはほぼ無関係な立ち位置になっているのです。

一方、売却する不動産が別荘だった場合はどうでしょうか?

■別荘の売却は特例が適用できない
そもそも「別荘を所有している」と言う人は、ある程度の資産を持っている余裕のある人と判断できますよね。別荘は、生活に必要不可欠な物ではありませんし、これを売却する場合には、当然マイホームの売却時のような税金の優遇措置などはないわけです。
例えば、3,000万円で購入した別荘が4,000万円で売却できた場合、その売却益は1,000万円になりますね。この場合、マイホームであれば、3,000万円以下なので税金はありませんが、別荘の場合は、売却益に対し譲渡所得税が発生するわけです。なお、譲渡所得税は、「物件を所有していた期間」で税率が変わり、5年未満(短期譲渡所得)で売却したとすれば、なんと約39%もの税率になるのです。ちなみに、5年以上保有していた場合には、20%まで税率が下がるのですが、それでも高い税率であることに変わりはありません。

このように、別荘の売却は、マイホームの売却とは異なり、譲渡所得に関する特例が使えないことから、運よく売却で利益が出たとしても、多額の税金を支払わなければならないという点に注意しておきましょう。

損益通算ができない

別荘の売却では、『損失が出ても、損益通算ができない』と言う点にも注意しましょう。

長期的に保有していた別荘を売却する場合には、一般的に手に入れた時よりも売却価格が安くなります。つまり、損失が発生してしまうという形になるわけですね。なお、別荘の売買で損失が出るのは、土地の価格は必ずしも下がるというわけではないのですが、建物部分はどうしても経年劣化してしまいますので、総合的な取引価格が下がってしまうことによります。

例えば、3,000万円で購入した別荘が、売りに出したら2,000万円になったという場合、この取引では1,000万円の損失が発生したとみなされます。こういった不動産取引での損失は、「給与所得と不動産所得は損益通算が可能」というイメージがあることから、別荘の売買で生じた損失を給与所得から差し引いて、所得税を軽減しようと考える方もいるかもしれませんね。ただし、この損益通算と言う制度に関しても、制度が使えるのは必要なもの(マイホーム)の売却に限られますので、生活必需品ではない別荘の売却では利用できません。

参考:国税庁『No.2250 損益通算

そもそも別荘は売却が難しい

ここまでの説明で、別荘の売却時には、税金のことをしっかりと考えておかなければならないということが分かっていただけたと思います。しかし、税金関係の話は、あくまでも別荘が売却できた時の話です。

と言うのも、別荘の売却で最も苦労するのは「そもそも買い手がなかなか見つからない…」と言う部分なのです。別荘の所有者からすれば、「景色もいいし、静かで落ち着いた良い場所」と思うかもしれませんが、立地に求めるものは人それぞれですし、そもそも別荘を所有できるだけの余裕がある人を見つけなければいけないのです。ここでは、別荘がなかなか売却できない理由について簡単に解説しておきます。

物件が古く修繕が必要

別荘が多く建てられるようになったのは、1970年代以降だと言われています。そして、1980年代後半のバブル期になると、別荘の人気が一気に高くなったのですが、バブル崩壊を機にその熱が下がってしまっています。

そのため、全国的に有名な別荘地である長野や山梨の物件でも、現在では、その取引価格が数百万円以下となっているものも多いです。と言うのも、バブル期に建てられた建物であれば、築40年程度経過していますし、さまざまな部分が老朽化していると考えられます。立地が良いからと購入したとしても、使用するには屋根や外壁を直さないといけない、水回り設備を全て交換しないといけないなど、利用するために多額のコストがかかってしまう訳です。これが、毎日を過ごす自宅であれば、必要な出費と割り切れるかもしれませんが、年に数回しか使用しない別荘となると、なかなか踏ん切りがつかない方が多いでしょう。

こういったこともあり、築年数が経過した別荘の売却では、「リフォームしてから売りに出す」などの対策が必要です。

不便な立地が多い

別荘地として有名な場所は、「そもそも交通の便があまり良くない」と言う特徴があります。中には、新幹線などを使っていけるような場所もあるのですが、多くは、自家用車でも数時間運転してようやくたどり着くことができる…と言った立地になっています。

別荘ブームの頃であれば、立地が悪くても、人が集まるということで、飲食店や土産店などもあったのですが、別荘ブームの人気が底をついた今、かつてあった店舗のほとんどが撤退して、かろうじてインフラのみが維持されているというような場所もあるのです。
いくら別荘だとは言え、こういった住環境の悪い立地になると、何かと不便ですので、買手が付きにくくなってしまいます。

不動産会社が取り扱いしたがらない

現在では、別荘の価格がかなり下がっています。テレビなどでも「こんなに広大な敷地を持つ別荘が驚きの価格で!」なんて番組が時々放送されていますよね。実際に、こういった番組を見ていると、とても景色が良く、リフォームもされているのに、数百万円で手に入るというような物件も多いです。

逆に言えば、そこまで値を下げなければ買い手が見つからないということなのですが、不動産会社は、買手を見つけた際の仲介手数料で利益を出していく企業になります。そして、仲介手数料は、物件の取引価格に応じて上限が設定されていますので、価格が低下している別荘の取り引きは不動産会社にうまみがほとんどないと判断されるため、仲介をしたがらない業者も多いのです。
なお、2018年の宅建業法改正では、「低廉な空き家等の売買」で得られる仲介手数料の上限が18万円と決められました。つまり、売れにくい別荘を取り扱い、頑張って売却できたとしても、ほぼ間違いなく赤字になってしまう訳でので、多くの不動産会社が別荘の取り扱いをしたがらないようになっているわけです。

維持管理費が高い

別荘ブームのころは、別荘を所有していることがステータスのような意味を持っていましたので、維持管理にコストがかかったとしても、所有するという方も多かったです。しかし、現在では、「持っているだけでこんなにかかるのは馬鹿らしい」と考える方が多くなるほど、維持管理コストが高いのです。

まず、温泉地などにある別荘であれば、お風呂のお湯が『温泉』と言うメリットがあったりします。実際に、「別荘で温泉に入れる」と言った部分をメリットとして打ち出すケースも多いです。しかし、温泉付き別荘は、温泉使用料などの経費が掛かることを忘れてはいけません。さらに、温泉は通常の水道よりも設備の腐食などが早くなってしまうことから、設備の維持コストも高くなります。つまり、別荘によっては、毎日過ごしているわけではない物件なのに、固定費がかかってしまうケースがあるのです。

さらに、別荘は固定資産税が高い物件が多いという点も注意すべきです。別荘の市場価格が下がっているのであれば、固定資産税も下がっているのでは…と考えるものですが、一概にそうとは言えないようなケースがあるのです。
実際に、10万円の購入した土地に関して、毎年の固定資産税で20万円かかるなんて事例も多いと言われているので、市場での人気が急落しているのです。

また、金額はそこまで大きくないのですが、住民票を移さず、別荘を持つだけでもその自治体のライフラインを利用することになるので、住民税がかかるということも覚えておきましょう。また、特定の別荘地の中には、別荘税と言うものがあったりしますので、別荘を所有するだけでさまざまな経費が掛かってしまう…と言うことを嫌い、買手が付かなくなっているわけです。

まとめ

今回は、別荘の売却を検討している方に向け、別荘売却時の注意点についてご紹介してきました。この記事でご紹介したように、別荘の売却は、同じ不動産であるマイホームの売却とは、税金上の取り扱いが全く異なるということは頭に入れておきましょう。

なお、今の時代、別荘を売りたくても仲介で売却できると考えられるのは、相当に立地が良く、建物の劣化も少ないというような物件でないと難しいです。上述しているように、別荘の需要自体が近年かなり低くなっていますし、二束三文の価値しかつかないような物件が多いのです。そのため、仲介の不動産会社に売却を依頼したとしても、不動産会社側のうまみが全くなく、取り扱い自体を断られてしまうケースも多いです。

どうしても別荘を手放したい場合には、仲介ではなく、不動産買取業者に相談するのがオススメですよ。不動産買取業者は、買取した物件をリフォームして再販するのが目的ですし、売却の前に余計なコストをかけることなく、売りぬくことが可能です。