山林の相続に関する基礎知識!相続したくない人は絶対におさえておこう!
親が『山林』を所有しているという方は、将来的に自分がその山林を相続するのか相続放棄するのか、しっかりと検討しておく必要があるでしょう。
賃貸アパートなどの相続であれば、活用方法がさまざまなので、そこまで難しく考えなくても良いのですが、山林は非常に活用しにくく、管理などにも手間とコストがかかってしまいます。そして、何の有効活用もできていない山林だとしても、所有していれば問答無用で固定資産税が課せられてしまう訳ですので、「相続しても取り扱いに困るし、相続したくない…」と考えている方も多いです。
そこでこの記事では、親が山林を所有しているという方に向けて、相続が起きた時にどのような対処をしなければいけないのか、また山林を相続することのメリット・デメリットをご紹介していきます。
山林の相続に関する基礎知識
まずは、山林の相続に関する基礎知識を簡単にご紹介していきます。そもそも「相続」とは、「亡くなった方から財産や権利・義務などを引き継ぐこと」ことを指しており、その他の不動産と同じく、山林を相続した場合、亡くなった方からその山林の所有権を引き継ぎ、相続人が新たな所有者になることになります。
相続人は、相続すべき人のことを指しており、日本では民法によって誰が相続人となるかが定められています。まず、配偶者は常に相続人となり、それ以外は、子どもが第1順位、親が第2順位、兄弟姉妹が第3順位と相続人の順位が決まっています。
この相続人の決まりから、親が山林を所有していた場合、子供がその山林を相続することが基本となります。ただし、相続人が複数いる場合は、全員で『遺産分割協議』を行い「誰が相続するか」を決定します。遺産分割協議による合意が成立するまでは、相続人全員で共有している状態と考えてください。
なお、遺言書が存在する場合には、遺言書に指定された人が相続することになります。例えば、親が遺言書で「山林は長男に相続させる」などと遺していた場合、その他の子どもはその山林を相続しません。
ちなみに、親から相続される財産には、動産と不動産など、種類が存在しています。そして、山林に関しては、不動産という扱いを受けます。つまり、山林を相続した場合には、その他の不動産を相続した時と同じく、「登記名義の変更」などの手続きが必要になると考えてください。詳しくは後述しますが、山林の相続は宅地と手続きが異なる部分もありますので、その辺りに注意です。
山林を相続するメリットとは?
ここからは、親が山林を所有しているという場合に、その山林を相続することで得られるメリットについて簡単に解説していきます。なお、山林は、その他の不動産と異なり「相続したくない」と考える方が多いのですが、こういった方が考えている「山林のデメリット面」も簡単にご紹介してお行きます。
相続するメリット
まずは、山林を相続することで考えられるメリット面からです。上述したように、山林は不動産ですので、「活用できるか?」が非常に重要なポイントになると考えられるです。一般的には、以下のような活用方法がメリットと捉えられています。
山林を相続したとしても、自分で利用する必要はありません。例えば、賃貸住宅のように、貸し出すという活用方法も考えられます。もちろん、山林の場所や大きさにもよりますが、自治体や林業を行っている業者に貸し出し、それで利益を得ることは可能です。他にも、キノコや山菜などが採取できれば、そういった業者に貸し出すという選択肢があります。
林業を営んでいる方であれば、木材を加工して売却することで利益を出すことが可能です。
近年では、キャンプやハイキングなど、アウトドア人気が非常に高くなっています。そのため、そういったレクリエーションの場所として貸し出すという方法も考えられます。
それなりの初期投資が必要ですが、山林の条件によっては太陽光発電所として利用することができます。広大な面積があり、適度な傾斜があるような山林であれば、効率的に発電することができ、売電収入が期待できます。
相続するデメリット
上記のように、活用方法が見いだせれば山林を相続しても問題ないと思います。しかし、現実的な話をすれば、以下のようなデメリットがありますので、山林は相続したくない…と考える方が多いようです。
一つ目のデメリットとしては、山林は宅地などの他の不動産と比較すると、売却するのが非常に困難だということです。上記のような活用方法がない場合、税金を支払いたくないから売却したいと考えるかもしれませんが、なかなか買い手を見つけることはできないでしょう。また、山林は活用が難しいという点から、広さの割に売却価格も安くなってしまう点もデメリットです。
山林を相続した場合、林業や太陽光発電などの事業が思い浮かぶでしょう。最近であれば、キャンプ場を始めるという場合もあるかもしれませんね。しかし、どのような事業だとしても、商業地で行う事業と比較すれば、収益化がかなり困難です。林業で木材を売ったり、林産物を売る場合「原価はタダだし儲かる」と考えるかもしれませんが、そこまで甘いものではありません。多くの場合、専門の職人を雇う必要がありますし、現状その人員の給料すらなかなか満足に支払えない…という話をよく耳にします。
山林は放置していればどんどん荒れて行ってしまいます。そのため、その他の不動産と同じく管理が必要なのですが、専門知識が必要になるので外部業者に依頼せざるを得ません。つまり、山林は所有しているだけでそれなりの管理コストがかかってしまう訳です。さらに、何の活用もせず、管理コストだけが出て行っている山林でも、毎年固定資産税という税負担までかかってしまいます。
何の利益も出せない山林を相続した場合、あなたが亡くなれば、それを子供たちが相続することになるのです。要は、あなたが悩んでいた負担を、自分の子供にも引き継いでしまうことになるわけです。
山林を相続する場合の手続きについて
それでは、実際に山林を相続することになった場合に、必要になる手続きについても簡単にご紹介していきましょう。上述したように、山林の相続は、宅地など他の不動産と異なる部分がありますので、以下の内容を頭に入れておくと良いでしょう。
①市町村に届出を行う
山林を相続した場合、市町村に「所有者の届出」をしなければいけません。この際には、相続を証明する戸籍謄本や山林の位置を示すような図面などを用意しなければいけません。必要書類などは、自治体によって異なる場合もあるので、念のため確認しておきましょう。
なお、「所有者の届出」は、90日以内にしなければならないとされていて、これを怠ってしまった場合には、「10万円以下の罰金」という罰則も用意されています。
②法務局にて名義変更
次は、山林の所有者名義について、法務局にて名義変更をする必要があります。
この時には、亡くなった方の出生から死亡時までの戸籍謄本類、住民票の除票、相続する人の住民票や印鑑証明など、さまざまな書類を用意しなければいけません。さらに、遺言書による相続の場合と、遺産分割協議による相続でも用意する書類が変わります。
この辺りは、実際に名義変更を行う前に、法務局に問い合わせてみましょう。
③森林組合に報告
山林の相続の場合、森林組合に自分が相続したことを報告しておくのがオススメです。その際に、管理や売却の希望を伝えておくと良いでしょう。森林組合にこういった意思を示しておけば、山林を買いたいという方や借りたいという方が現れた時に自分の山林を紹介してくれたりするのです。
山林の管理や活用は、素人では非常に難しいので、専門家である森林組合はいざという時の非常に心強い相談役になってもらいましょう。
山林を相続したくない場合の対処
一般の方からすれば、山林は宅地と異なり、利活用方法がイメージできないことから、管理や税負担の問題から「相続したくない…」と考えてしまうものです。それでは、実際のところ、山林を相続したくないと思った時は、どのような対処をするのが正しいのでしょうか?
以下で、山林を相続したくないと考えた時の対処法をいくつかご紹介しておきます。
①相続放棄をする
「相続したくない…」と思った時に真っ先に思い浮かぶのが相続放棄ですね。相続放棄は、負の遺産が大きいなどという場合に、一切の財産を相続しないという方法ですので、「いらない」と考えている山林の相続を避けることができます。ただし「一切の財産を放棄」と説明したように、相続できなくなるのは山林だけでなく、その他の財産も全てになります。
つまり、山林以外に、相続したいと考える価値のある財産がある場合、山林だけを限定的に相続放棄をすることはできないわけです。この辺りはしっかりと財産全体を計算して、「相続するのかしないのか?」を決定しなければいけません。相続放棄は、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所で「相続放棄の申述」をして、それが受理されれば良いだけです。なお、相続放棄は「もともと相続人でなかった」という扱いになり、その権利が次の人に移行してしまいますので、あなただけの問題ではないということを理解しておきましょう。
②寄付する
次は「寄付」という方法です。自治体によっては、自然保護を目的に、市民のレクリエーションなどに活用できるなど、有効と考えられる山林であれば、寄付を受け付けています。ただし、どのような山林でも寄付を受け付けているというわけではないので、あらかじめ寄付を受け付けてもらえるか、役所などに資料をもって相談に行くと良いでしょう。
他には、知り合いの法人や個人などで、受け取ってくれるような人がいれば、そうした人に寄付するのもアリかもしれません。なお、山林を寄付する場合にも、法務局などで不動産の名義変更は必要です。
③売却する
最後は最も単純ですが、なかなか難しいと考えられる方法です。要は、「欲しい」という方に売却するという手法ですね。
ただしこの方法に関しては、あなたが「利活用できない」と考えている山林ですので、他の多くの方もそう考えるはずです。しかし、もともと林業を生業にしている、林産物の販売をしている、キャンプ場を経営したいと考えている、メガソーラー業者など、山林を欲しがっている事業者が存在するのも事実なのです。つまり、「山林だから絶対に売却できない!」というわけではないのも事実なのです。
山林の売却に関しては、森林組合や「山林バンク」に相談するのが一般的ですが、不動産買取業者なども対応している場合があります。不動産買取業者の中には、太陽光発電業者と密接な関係がある場合もあり、そういった業者であれば、山林を好条件で買取りしてくれる場合があります。
まとめ
今回は、親が所有していた山林を相続することになった場合の基礎知識や注意点についてご紹介してきました。山林も不動産の一種という扱いになるのですが、宅地とは全く存在が異なるとも言えるでしょう。特に注意しておきたいのは、山林は素人ではほとんど利活用することができないという点で、多くの場合、他の財産と一緒に相続して、管理コストや税金だけ払う負の遺産になっています。
しかし、皆さんが「使い道がない」と考えているような山林でも、有効活用している事業者がたくさんいるのも事実ですので「どうせ売れない!」と最初から諦めるのではなく、弊社のような業者に相談してみてはいかがでしょうか?山林の条件によっては、予想以上の価格で売却できることもあると思いますよ!