家の売却を考えた場合「早く売る」方がメリットが大きい?早く売却するための基礎知識
不動産の売却を考えた場合、できるだけ高く売りたいのであれば、じっくり時間をかけて仲介により買い手を探す方が良いと言われています。仲介であれば、そこに住みたいという要望を持った一般の方と交渉することになるわけですし、それなりの準備をしてスムーズに交渉が進めば、相場よりも高い価格で売り抜けることもあると言われています。
しかし、現在の日本は、空き家問題が深刻な社会問題になっているような状況ですし、そもそも諸外国よりも『新築』に価値を求める方が多いことから、中古住宅の売却はなかなか難しい時代になっています。もちろん、立地が良く、築年数もまだそこまで経過していないような条件の良い不動産であれば、簡単に早期売却ができるかもしれませんが、それなりに古くなった中古住宅の場合、買い手を選んでいるうちにどんどん不動産の価値が下がってしまい、結果的に「早く売る」ことを重視していた方が良かった…なんてことになってしまう場合があるのです。
そこでこの記事では、不動産は「早く売る」方が良い理由やその方法をご紹介します。
不動産を早く売った方が良い理由
それでは、不動産を早く売った方が良い理由について解説していきましょう。なお、ここでいう「早く売る」というのは、「買いたい」という要望を持った人が現れた時に、焦って買い手の希望を全て叶える形で売却するということではありませんよ。当然、買い手側に「売り急いでいる」と思われてしまうと足元を見られてしまうことになるので、相手の言いなりになって急いで売るというスタンスはオススメしません。
不動産は「早く売る」ということを重視すると、売り手が損をしてしまうというイメージがありますが、売却方法やタイミングによっては「早く売る」方がメリットが大きい場合もあるのです。
①建物の価格はどんどん下がる
まず一つ目の理由です。不動産の売却にしても「土地の売却」「土地+建物の売却」「建物の売却」と、大きく3種類に分類することができます。
「建物の売却」については、借地権付きの取り引きという感じの非常に稀なケースで、一般的な不動産の売買は「土地の売却」もしくは「土地+建物の売却」という形態になるでしょう。そして、後者の中古戸建て住宅の売却というケースで考えると、土地の上に建っている建物のことを考えておかないといけないのです。建物は、築年数が経過すればするほど、劣化が進んでしまうもので、残存耐用年数がどんどん短くなっていきます。つまり、「高く売りたい」と考えて、顧客を選んで時間が経過していく間に、不動産自体の値打ちが下がってしまうという訳です。自分の希望を優先して何年も所有していれば、「売ろうかな」と考えた時点で売っていた方が高く売れていた…なんてことになるでしょう。
②相場価格の変動
一昔前までは、「土地は値下がりしない」というような『土地神話』のような物があったのですが、現在はそのようなことはなく、土地の価格は変動してしまうものです。
近い将来の話で考えても、生産緑地が関係する「2022年問題」という問題があり、すぐそこに住宅地が大量供給されて、一気に土地の価格が下がってしまうのでは…という懸念が存在しています。この2022年問題とは、全国に点在する農地について、生産緑地の指定が解除されるものがたくさん存在しており、それらが住宅地として不動産市場に出てくると予想されているのです。
商品の価格は「需要と供給」の関係で決まりますし、住宅地が供給過多になると不動産の相場価格が一気に下落してしまう可能性がありますよね。世の中には、こういった自分ではどうすることもできない事象があり、そのような時期を避けるために「早く売る」方が有利になる場合もあると考えてください。
③国などが用意している制度が関係する
不動産の売却は、非常に大きな金額が動くことになりますので、税金のことも無視することができません。そして、自宅として使用していた居住用財産の売却では、「3000万円の特別控除」という制度があり、不動産売却時の譲渡所得税の納税を免れることができるという制度があるのです。ただし、この制度を使用する場合、「住まなくなってから3年後の年末までに売却」という条件がありますので、じっくり買い手を見定めるのではなく、早く売ることを心がけた方が良いわけです。
また、相続した土地や建物を売却する場合、相続してから3年以内ならば取得費に相続税を加算でき、譲渡所得税を軽減できる可能性もあります。こういった優遇措置に関しては、必ず何らかの条件が付いていますので、それを満たすためには「早く売る」ということも考えておくべきです。
④不要なリスクとコストについて
最後は、災害リスクと、不動産の管理や固定資産税に関する問題を「早く売る」ことで回避することができるというメリットです。
日本は、諸外国と比較しても、地震や台風などの自然災害が非常に多い国です。さらに近年では、集中豪雨などによる水害なども頻発しており、どのような不動産でも常に災害リスクにさらされていると考えなければいけません。例えば、売り渋りをしている間に、何らかの自然災害で被災してしまうと、一気に家の価値が落ちてしまうことでしょう。それどころから売却すらできない…なんて状態になってしまう恐れもあります。
また、家は存在しているだけで劣化が進んでしまうものですので、所有していればメンテナンスなどにコストがかかってしまいます。他にも、固定資産税を支払わなければならないですし、「売ろうと思っている家」にそれなりのコストをかけなければいけないわけです。早く売却してしまえば、こういったリスクやコストがなくなりますので、それだけで大きなメリットと捉えることができるのではないでしょうか。
最短で不動産を売りたいなら「買取」がオススメ
不動産の売却を考えた時に、上記のような事を考えて「とにかく家を早く売りたい!」と考えたのであれば、「不動産買取」という選択肢が最短ルートになると考えておきましょう。不動産買取は、不動産会社に直接家を売却するという方法で、不動産会社が提示してくる査定額に納得ができれば、その場で売却が決まるという非常に単純な方法になります。もちろん、売却するのが不動産ですので、リサイクルショップで家電を売るといったようなその場だけの手続きで取引が終わるわけではありませんが、売買に必要な書類が揃っていれば、最短3日程度で家の現金化まで完了するという場合もあるほど、非常にスピーディな取引になります。
ここでは、不動産買取によって家を手放す場合のメリット・デメリットとできるだけ高く買い取ってもらうためのコツも簡単にご紹介しておきます。
買取のメリット・デメリット
不動産買取によって家を売却する場合、とにかく売却期間を短くすることができるという点が最大のメリットです。また、「早く売る」というメリット以外にも、不動産会社に直接家を売却するという手法ですので、仲介手数料がかからない、売却後の「契約不適合責任」という売主が負うべき責任が免除されるという点が非常に大きなメリットになります。
ただし、不動産会社は、買い取った家をリフォームなどして再販することが目的になりますので、自社の利益を残すために、最初から「再販のためにかかる経費」を差し引いて査定額を提示してくる点がデメリットになります。要は、家の売却価格が相場価格よりも1~3割程度安くなるので、仲介でもすぐに買い手が見つかりそうな物件の場合は、損な取引と感じるかもしれません。
買取と仲介の違いは、以前別の記事にまとめていますので、以下の記事をご参照ください。
関連:不動産買取とは?『仲介』と比べた場合、どんなメリットがあるの?
高く買い取ってもらうコツとは?
不動産買取により家を手放す場合、「売却価格が安くなってしまう」というのが唯一のデメリットになります。これは、不動産会社は再販で利益を出すためにあなたから買取するという取引になるので、致し方ない面もありますね。
それでは、買取唯一のデメリットを解消するor緩和するためにはどうすれば良いのでしょうか?それは、少し面倒なのですが、複数の買取業者に相談し、査定額を比較検討するという手法なのです。不動産買取業者でも、取り扱う物件について得手・不得手がありますので、同じ物件を査定しても、かなりの金額差が生じてしまうことがあるのです。例えば、一般的には買取でも難しいと言われる事故物件について、それを専門に取り扱うようなような業者も存在するのです。
一般の方が、それぞれの買取業者が得意とする物件の種類など、HPを見ただけで判断するのは難しいものです。したがって、実際に家を査定してもらい、提示額で比較検討するという手法がオススメです。
まとめ
今回は、不動産の売却を検討している方に向けて、家の売却は『仲介』が正解なのではなく、ケースによっては『早く売る』ということを優先したほうが良い理由についてご紹介してきました。仲介によって家を売却する場合、一般消費者に家を見てもらい、価格交渉をして売るか売らないかを決めるだけと考えている方が多く、仲介でもそこまで売るのに時間はかからない…と考えてしまう方がいます。しかし、この記事でご紹介したように、少子高齢化が進む日本では、中古住宅が供給過多になっていると言われていて、売りに出しても内覧希望すら全く入ってこない…なんてことは珍しくないのです。
仲介に出して、何カ月、何年も買い手が見つからない…なんて状態になってしまうと、建物の築年数がどんどん経過して、その価値が低下していってしまいます。特に、日本国内に多い木造住宅は、22年が法定耐用年数とされており、それまでに急激にその価値が落ちてしまう…という特徴があるのです。実際に、国土交通省が公表した「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」では、木造住宅は築10年でその価値が半分以下まで落ちてしまうというデータになっているのです。
こういった事からも、立地や築年数がまだ新しいなど、相当条件が良く、売りに出せばすぐに買い手が見つかるといった家以外は、悠長に買い手を待っていては、買取に出すよりも家の価値が下がってしまう恐れがあると考えておいた方が良いです。