コロナ禍で一軒家の賃貸需要が高くなっている?一軒家を貸す前に知っておきたい注意点!

昨年から続く新型コロナウイルス問題により、賃貸住宅に住む方の「家に求める条件」というものがかなり変わってきていると言われています。例えば、従来の賃貸需要では「駅から近い」「主要施設へのアクセスが良い」ということが重視される傾向にあったのですが、ここ最近ではこういった交通利便性よりも「より快適な住環境」「家族が安全・安心して生活できる」と言った事が重視されるようになっています。

特に、コロナ禍の現在、日本国内でもテレワークが一気に浸透してきており、「毎日出勤する必要がなくなった!」ということが非常に大きいのだと思います。自宅で仕事するとなると、部屋数の少ないマンションなどであれば、家族が出す音や家事をしている姿が目に入ることで、仕事に集中しにくくなってしまう…などという問題もあり、昨年末ごろより、一戸建ての賃貸物件需要が急激に高くなっていると言われています。

こういった事もあり、転勤や親の同居などで、もともと住んでいた一軒家が空き家になってしまった場合、『売る』という選択肢ではなく『貸す』という選択肢を検討する方も多くなっています。そもそも、誰も住まなくなったからと言って放置してしまうと、どんどん家の劣化が進んでしまい、売却したいと思った時には価値が激減している…なんてリスクがあります。さらに、放置空き家として自治体に『特定空き家』の指定を受けてしまうと、固定資産税が高くなってしまうなど、さまざまなリスクが存在するのです。したがって、住まなくなった空き家はできるだけ早く売却するというのが主流の考え方だったわけですね。

これがコロナ問題により、『貸す』という選択肢が浮上してきたのですが、本当に貸すという選択肢はあなたにとってベストな選択になるのでしょうか?この記事では、一軒家を貸す場合に注意しておきたいいくつかのポイントをご紹介します。

一軒家を貸し出すことのメリットとは?

それではまず、住まなくなった一戸建てを賃貸物件として貸し出す場合のメリットについて簡単にご紹介しておきましょう。賃貸需要が高く、すぐに借り手が見つかるといった場合には、売却することにはないメリットがたくさん存在しています。以下で、一軒家を貸し出す際のメリットを簡単にご紹介しておきます。

  • 家賃収入が得られる
    家を貸すことの最大のメリットが「継続的な家賃収入が得られる!」というポイントです。管理会社と契約すれば、家の所有者は何の手間もなく、不労所得を得ることができます。
  • 家を手放さなくて済む
    頑張って手に入れた家や自分が生まれ育った思い出のある家を手放すのは寂しい…と感じてしまう方が多いです。賃貸物件とすれば、自分が住むわけではないにしても手放さずに済むというメリットがあります。
  • 再び住むという選択肢が残せる
    転勤などで一時的に離れるという場合、賃貸であれば将来的に再びその家に住むという選択肢が残せます。
  • 資産として保有し、将来的に活用できる
    今すぐ自分は使わないにしても、貴重な財産として残すことができ、将来的に活用するという選択肢が残ります。耐用年数までは貸し出して、その後、建て替えて自分が住んだり、他の用途にも使用することが可能です。売却してしまえば、こういった選択肢がその時点で全てなくなるので、選択肢が広がるのは大きなメリットです。
  • 放置空き家リスクを回避できる
    家は使わない方が早く傷むと言われています。誰も住んでいなければ、ホコリもたまりますし、湿気もこもってしまいます。これが賃貸に出せば、換気や掃除など、適切な管理を住人が行っていきますので、安心です。放置空き家になってしまうと、不法投棄や放火のリスクなどがありますし、家が倒壊して周辺に悪影響を及ぼして損害賠償を請求されてしまう…なんて心配があります。

このように、住まなくなった一軒家を第三者に貸し出すのは、いろいろなメリットが得られるわけです。

一軒家を貸す場合の注意点について

それでは、何らかの理由で住まない一軒家ができるという場合、それを売るのではなく貸し出すことを検討した場合におさえておきたい注意点をご紹介していきましょう。何も考えずに賃貸に出してしまうと、後から面倒な事態に巻き込まれてしまう場合も考えられるのです。

賃貸借契約の種類について

転勤などを理由に、今まで住んでいた一軒家を貸し出すといった場合、将来的にその家をどうしたいかによって賃貸借契約の種類を選ばなければいけません。今まで賃貸経営などしたこともない人が良くしてしまう失敗なのですが、賃貸借契約にも「普通借家契約」と「定期借家契約」が存在しており、この違いを押さえておかなければ、先々のトラブルに発展してしまう恐れがあるのです。

例えば、転勤期間が決まっていて、将来は自分で住みたいと考えるような方は「定期借家契約」で貸さないと、転勤が終わっても出て行ってもらえない…なんて恐れがあるわけです。ここでは、それぞれの契約について簡単にご紹介しておきます。

■普通借家契約
これは、アパートやマンションなど、一般的な賃貸契約に使用される方法です。「普通借家契約」は、契約の更新制度があり、1年以上の契約期間であれば何年でも構いませんが、凡その場合、2年契約を設定するのが一般的です。そして、契約期間ごとに、更新料を支払うという感じの契約になるのですが、借主からは何時でも解約の申し入れを行うことができるものの、貸主からの解約の申し入れは「正当な事由」がないとできないことになっているのです。そして、普通借家契約の場合、契約期間が決まっていたとしても、入居者の権利が非常に強く保護されており、入居者が住み続けたいという意向を示せば、契約が更新されて住み続けることができるのです。貸主側の解約や更新拒絶に関しては「正当な事由」があれば可能とされているものの、認められるのは非常に稀です。例えば、「自分が住むから」というのは、正当な事由として認められず、入居者に出て行ってもらうことができないわけです。つまり、転勤から戻ってきても、自分の家には住むことができず、賃貸物件を借りなければならない…なんてことになるのです。
■定期借家契約
定期借家契約は、契約期間を自由に決めることができ、契約更新がないのが特徴です。書面にて契約し、契約終了の1年から6ヶ月前までに、契約終了を通知すれば、契約期間の終了とともに退去してもらうことが可能です。なお、貸主と借主の合意があれば、再契約することも可能です。期間が決まっている転勤など、一定の期間だけ家を貸しだす方法をリロケーションというのですが、このケースでは定期借家契約が選ばれます。注意が必要なのは、定期借家契約の場合、借主は「いずれ引っ越しが必要になる」ということが明確ですので、入居者に嫌われる傾向があり、空室リスクが高くなります。したがって、相場よりも安い家賃設定にしなければならない…などのデメリットが存在します。

このように、貸し出す場合の契約の仕方をしっかりと考えておかなければ、後々のトラブルにつながってしまう恐れがあるのです。一軒家を貸し出す場合でも、数年後、確実に戻ってくるという想定があるのであれば定期借家契約を選ぶべきでしょう。

管理の仕方の違いについて

賃貸物件として一軒家を貸し出す場合、物件の管理方法についてもしっかりと検討しておく必要があります。上述したように、管理会社に管理を任せている場合、所有者は何の手間もなくなるのですが、管理費用を支払わなければいけません。管理費用がもったいない…と思うのであれば、物件の管理を自分でしなければいけませんし、その場合は決して『不労所得』などと呼べるような状態にはなりません。

一般的に、物件の管理方法には「自主管理」「管理委託」「サブリース」の3種類がありますので、それぞれの特徴を押さえておきましょう。

■自主管理
自主管理は、その言葉通り、家賃回収からクレーム対応、設備の不具合に関する入居者とのやり取りをオーナー自らが行う方法です。この場合、自分で全ての手配を行う訳ですので、管理費用を抑えられるのがメリットです。なお、自主管理の場合でも、入居者募集から賃貸借契約の締結までは、不動産会社に依頼します。注意が必要なのは、自主管理の場合、クレームやトラブル、設備の修理など、入居者からの連絡があれば、常に対応できるようにしておかなければならないことです。皆さんが考えている以上に、手間も時間もかかりますので、近くに住んでいて目の届く範囲に物件があるというのでない限り現実的ではないと思います。
■管理委託
これは、物件の管理業務全般を管理会社に委託する方法です。専門知識を持つ業者に任せるわけですので、費用はかかるものの、一切の手間がなくなるため、安心して賃貸経営を進めることができます。一般的に、家賃の5~15%程度を管理費として支払うのですが、管理会社によって「どこからどこまでの業務を行うのか?」といった作業内容に違いがあるので、しっかりと比較検討する必要があります。
■サブリース
これは、不動産会社がオーナーから物件を借りて、その上で居住者に貸し出すという方法にです。専門用語では「転貸(てんたい)」と呼ばれるのですが、分かりやすく言えばまた貸しという状態です。サブリースのメリットは、オーナーはあくまでも不動産会社と契約しているわけですので、借り手が退去したとしても一定の家賃を補償してもらうことができるという点です。ただし、サブリースの場合は、また貸しで利益を出すわけですので、不動産会社の利益を出すために、オーナーが手にできる賃料は相場よりも安くなってしまいます。

このように、賃貸経営に関わる管理もその手法はいくつかの種類が存在しています。管理費用の削減を考えた場合、自主管理が良さそうと思うかもしれませんが、正直な話、賃貸経営初心者の方であれば、自主管理は現実的ではないと思います。最もオススメなのは、専門の管理会社に管理を委託する方法だと思いますよ。
とにかく「空室が心配…」という方であれば、サブリースでも良いと思いますが、手にできる賃料が少なくなりますので、こちらは安定度を重視する方向けと言えます。

住宅ローンが残っている方は注意!

一軒家の貸し出しを検討している方の中には、「まだ住宅ローンが残っている…」という状態も考えられるのですが、この場合は注意が必要です。住宅ローンというものは、「自宅を買う人のためのローン」であり、要は自分で住むことを条件に低金利になっているのです。

住宅ローンが残っている家を賃貸に出す場合、事業用ローンに切り替えることが原則なのですが、そうすると住宅ローンよりも金利が高くなってしまいます。ただし、「転勤の間だけ貸し出す」など、致し方ない理由があると判断してもらえた場合には、特例として住宅ローンのままで賃貸することを認めてもらえる場合がありますので、できるだけ早く金融機関に相談してみましょう。

なお、「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」については、自分や家族が居住しなくなる場合は適用されなくなるので注意しましょう。銀行が、住宅ローンのまま賃貸を許してくれたとしても、住宅ローン控除の適用はできなくなると考えておいた方が良いですよ。ただし、一度対象外になったとしても、一定の要件を満たすことで、マイホームに戻った後は、残存控除期間について再適用してもらうことは可能です。この辺りは、最寄りの税務署に相談してみましょう。

一軒家の貸し出しはデメリットをきちんと押さえて!

ここまでで、転勤などで住んでいた家が空き家になるといった場合、売却するのではなく『貸す』という選択肢をとる場合の注意点は分かっていただけたと思います。一軒家を賃貸に出すという選択は、継続的な家賃収入が期待できるという点が大きなメリットなのですが、何のデメリットもないというわけではありません。

現在、「空き家を売るか貸すかで迷っている…」という方がいれば、貸す場合のメリットだけに着目するのではなく、デメリット面もしっかりと理解して自分にとって本当にベストな選択が何なのかをしっかりと考えるべきです。ここでは、一軒家を貸すという選択肢のデメリットを簡単にご紹介しておきます。

  • 空室リスクがある
    コロナ禍で一軒家の賃貸需要が高くなっているとはいえ、日本全国どこでも戸建て賃貸の方が人気というわけではありません。要は、賃貸に出せば必ず借り手が付くというわけではないのです。そして借り手が付かない間は収入が得られないのに、ローンの返済や固定資産税、家の管理コストなどさまざまな費用の支払いはしなければいけません。売却していれば、こういった支出はないわけですので、大きなデメリットになります。
  • メンテナンスコストがかかる
    賃貸に出す場合、「早く入居者をつける」「入居者の満足度を維持する」などという目的で、自分が住むとき以上に丁寧な修繕が必要です。家を貸しだしていたとしても、通常利用の摩耗の場合、修繕費はオーナーが負担しなければいけませんし、予期せぬ設備の故障などがあれば、費用がかかりますので、その備えとしてある程度の余剰金を常に用意しなければいけません。
  • 入居者トラブルの不安がある
    賃貸に出す場合、入居者が必ず良心的な人物とは限りません。きちんと審査したとしても、入居者トラブルの可能性はゼロになることはないのです。例えば、家賃滞納のリスクもありますし、家の管理をテキトーにしてボロボロにされてしまったのに退去費用は支払ってもらえない…なんて危険もあるでしょう。さらに、近隣の方とトラブルを引き起こし、戻ってきてみると、自分も白い目で見られて住みにくくなってしまう…なんて危険もあるでしょう。家賃保証会社などを挟めば、家賃滞納リスクには備えられますが、入居者トラブル全てを防げるわけではないと考えておきましょう。売却の場合は、このような心配が一切ありません。
  • 賃貸経営上の手間
    家賃収入を得る場合、不動産所得として確定申告が必要です。基本的には、賃貸経営が初めてという方でも自分で手続きをすることは可能なのですが、面倒なのには変わりありませんし、もともとなかった手間が加わるのは大きなデメリットです。最近では、管理会社が「納税代行」のオプションサービスを作っている場合もありますので、コストに目を瞑ればそういったものを利用するのが良いかもしれませんね。

このように、自分が住まないからと言って、第三者に賃貸に出す場合、さまざまなデメリットもあると考えておきましょう。もちろん、入居者が非常に良い方で、貸し出している間に何の手間もなく、順調に家賃収入が得られるなんてこともありますが、このようなことは非常に稀なケースだと考えておいた方が良いですよ。

転勤や親の同居などで一軒家を売るか貸すで迷った場合、慎重にメリットとデメリットを比較し、自分にとってベストな選択が何なのかを考えるようにしましょう!

まとめ

今回は、一軒家を賃貸に出す場合の注意点についてご紹介してきました。冒頭でご紹介したように、新型コロナウイルス問題が長引く日本では、従来の賃貸需要が大きな変革期に来ていると言われており、マンションの様な共用部のない一軒家で暮らしたいと考えるファミリー層が増えているのです。特に、テレワークが一般化した現在では、多少郊外の家で交通利便性が悪くなったとしても、日常生活には大きな悪影響が出ないと考える人も多くなっているようです。

そのため、転勤などで空き家になる…、実家を相続した…などと言った場合、その家を売るのではなく、賃貸に出すという選択肢に迷ってしまうという方が急増しているのです。正直な話、一軒家を賃貸に出し、すぐに良心的な入居者が見つかると想定するのであれば、確実に家を売却するよりも賃貸に出した方が大きなメリットがあると考えられます。しかし、世の中そんなに甘いものではなく、賃貸に出そうとリフォームしたものの、全く借り手がつかずに赤字ばかり嵩んでいってしまう…という話はごまんとあるのです。

賃貸経営は、管理会社と契約すれば、放っておいてもお金が入ってくるなど、非常に単純に考えてしまう方が多いのですが、失敗してしまう方も多い非常に厳しい世界だということも忘れてはいけません。少しでも賃貸経営に不安があるようであれば、素直の売却して現金を得た方が安心できると思いますよ!