「雨漏りがある家」の売却ってできるの?雨漏りのある家を賢く売却する方法について

住宅関連のトラブルで最も多いと言われているのが『雨漏り』です。雨漏りは、屋根の劣化が原因となる…とお考えの方が多いのですが、実は屋根だけでなく、外壁やベランダなど、さまざまな部分が雨漏り原因箇所となってしまうため、どのような住宅だとしても適切なメンテナンスを怠っていれば、いずれ必ず雨漏り被害に直面してしまうものです。しかも日本は、地震や台風などの自然災害が多い国として有名ですし、強風や揺れなどによって建物が破損し、そこから雨水が侵入してしまう…なんてことも考えられます。

正直な話、それなりに築年数が経過した建物であれば「雨漏りがすでに発生していてもおかしくない…」と言えるのが日本の住宅です。それでは、家の売却を検討した時に、その家で雨漏りが発生している…と言った場合、買い手はつくものなのでしょうか?また、希望する価格で売却することができるものなのでしょうか?

最初に言っておきますが、『雨漏りがある家でも売却することは可能』が答えとなります。ただし、売却するにしても「雨漏りを修理したうえで売却する」というケースと「雨漏りをそのままにして売却する」というケースに分かれますので、ここでは雨漏り被害がある住宅の売却を検討した場合の注意点をご紹介していきます。

『雨漏りのある家』の売却は、告知義務がある!

まずは、雨漏りがある家の売却など、何らかの欠陥があるということが分かっている住宅を売却する場合に行っておかなければならない行為についてご紹介しておきます。

住宅で発生している雨漏りというものは、『物理的瑕疵』と呼ばれる欠陥に該当するのですが、こういった瑕疵のある家を売却する場合、売主は買主に対して「瑕疵の事実」を告知しなければいけません。

物理的瑕疵⇒物件が抱える直接的な欠陥や不具合のこと。雨漏りもこれに該当します。

これは、『告知義務』と呼ばれるもので、告知義務を怠ってしまい、購入者が家に住み始めてから雨漏りなどの瑕疵に気付いた…という場合、売買後のトラブルに発展してしまう恐れがあります。

『雨漏りのある家』はカビやシロアリの危険もある!

不動産の売買に関しては、宅地建物取引業法第35条で、売主は建物における瑕疵を買主に告知しなければならないと定めています。なお、この告知義務に関しては、雨漏りをきちんと修理した場合でもなくなりません。

もし雨漏りの事実を隠したまま家を売却してしまい、後からそれが発覚してしまった…なんてことになると、『契約不適合責任』を追及されることになり、最悪の場合は契約の解除及び損害賠償の請求を受けてしまう恐れまであります

なお、雨漏りが発生してしまっている住宅は、ほとんどの場合、カビやシロアリの繁殖など、二次被害が発生していると考えてください。木造住宅の多い日本では、「家の天敵」と呼ばれるシロアリですが、湿気を含む木材が好物ですので、雨漏りしている家は絶好の場所となってしまうのです。そして、シロアリが発生した家は、柱や梁など建物の強度に関係する躯体部分を食べられてしまい、建物の強度が極端に落ちてしまいます。
雨漏りがあった家の売却を考えて、雨漏りの修繕を行ったものの、カビやシロアリなどの二次被害を無視してしまった場合、後から発見されて、この部分で契約不適合責任を問われてしまう恐れもあります。

雨漏りがあった家は、ホームインスペクションを受けておこう

雨漏りが発生した住宅の売却については、雨漏り修理をきちんと行い、外観上全く問題がなく見えても、深部では上述のような二次被害が発生している恐れがあります。売却後のトラブルを防ぐためには、家にどのような問題があるのかを『住宅診断(ホームインスペクション)』によって調査してもらい、物件の瑕疵をしっかりと確認してから売却するのが大切です。

なお、雨漏りがあった家というのは、「住宅診断が必須」ですが、こういった目に見える被害が一度もなかった…という住宅でも、仲介に出す場合は住宅診断を受けておくのがオススメです。売却後に何か瑕疵が見つかれば、契約解除を申し出られてしまいますし、あらかじめ欠陥の有無を調べてから、修繕の必要があれば修繕し、その結果を告知することで売却後のトラブルを防止することができます。なお、「診断済み」の物件は、買主も「瑕疵の心配がない家」と安心して購入できますし、その分需要や売却価格が高くなると予想できます。

『雨漏りのある家』は修繕してから売った方が良いのか?

それではここからは、雨漏りがある家の売却について、『修繕してから売却する』のと、『そのまま売却する』のではどちらが良いのかについて考えてみたいと思います。基本的に、雨漏りが発生している家というものは、シロアリやカビの繁殖と言った二次被害の可能性が高いということもあり、そのまま売却するという選択をしても、なかなか買い手が付きにくいというのが実情です。

ただし、修繕したからと言って必ず売却ができるというわけではないのが難しいところです。ここでは、雨漏りを修繕して売却する場合のメリット面とデメリット面を簡単にご紹介しておきます。

修繕すれば一般物件と同じ性能を主張できる

雨漏りを修繕するとなれば、手間も時間もコストもかかってしまうことになります。ただし、きちんと修繕を済ませてから市場に出せば、「一般物件と同様の居住性能を持っている」という証明になるというメリットがあります。

雨漏り修繕に合わせて、今後雨漏りしそうな箇所があるか点検してもらい、部分的な修繕を行っておくこともできます。そのため、築古物件だとしても「雨漏り修理及び、古くなっている部分はすべて新しく改修しています!修繕保証もあります」などと、「メンテナンスがされている住宅」としてアピールすることも可能なのです。
雨漏りした家だとしても、その後に修繕して、住宅診断や修繕保証を付けることで、中古物件の中でも「安心できる物件」という好印象を与えられるというのは大きなメリットだと思います。

修繕すれば良いというものではない

雨漏りがある住宅でも、修繕すれば良いというわけではありません。売却前に修繕するという行為に関しても、いくつかのデメリットが存在しますので、その部分はしっかりと押さえておきましょう。売却前に修繕を行うデメリットは、以下のような懸念です。

■修理費用が高額になる場合がある
雨漏り修理にかかる費用に関しては、被害程度や修繕箇所、修理内容によって異なるのですが、一般的に数万円から数十万円が相場です。例えば、雨漏りに気付くのが遅れてしまい、天井部分のクロスにシミが…なんてことになっていれば、外装部分の修理だけではすみませんし、それなりのコストがかかってしまいます。さらに、最悪の場合、屋根の全面的なリフォームが必要になる…なんてケースもあり、その場合は100万円以上のコストがかかってしまう訳です。「家を売却する」という最終目標のために、100万円以上のコストが先出しになる…というのはなかなか大きなデメリットですね。
■修繕したとしても売れ残る可能性がある
これが最悪のパターンですね。それなりのコストをかけて修繕したものの、「過去に雨漏り被害があった…」という事実を嫌い、購入をためらってしまう買主は多いです。そうはいっても、告知義務があるので隠すことはできません。つまり、「雨漏りがあったのですが直しました」と素直に伝えたとしても、「雨漏りのせいで、他の部分も悪くなっていそう…」などと考えられてしまい、売れ残ってしまう可能性があるということです。これであれば、雨漏り修理にお金などかけずに、そのまま売りに出しておいた方が良かった…と考えてしまいますよね。

このように、売主責任が大きくなっている現在では、雨漏り被害を受けた…といったような家に関しては、仲介の場合は修理したとしても売れ残ってしまう可能性がそれなりにあると考えて、修繕するのか、そのまま売却を試みるか慎重に検討しないといけません。

『雨漏りのある家』はどうやって売る?

それでは最後に、「雨漏りしている」or「雨漏りしていた」家について、できるだけ高く売却するためにどうすれば良いのかについて考えてみましょう。冒頭でご紹介したように、雨漏りがある家だったとしても、それだけで売却することができない…というわけではありません。ここでは、雨漏り経験のある家を売却するための手法をいくつかご紹介します。

解体してから『土地』として売る

まず一つ目は、既存住宅を解体して、土地として売却するという手法です。「雨漏りした家」に買い手が付きにくいのは、修繕をきちんとしたとしても「目に見えない位置に何か問題があるのでは…」と思われてしまったり、単純に家のメンテナンスをきちんとしていなかったのでは…などと考えられてしまい、いくら修繕していたとしても、建物にリスクがあると考えられてしまうからです。

したがって、購入者のリスクとなる建物を解体して『更地』にしてしまえば、注文住宅を建てたいと考えている方に売りやすくなります。この方法に関しては、そもそも築年数がかなり経過していて、雨漏りの有無以前に建物としての価値がそこまで見込めない…と言った家であれば、オススメの手法です。
ちなみに、解体にはそれなりのコストがかかりますので、その点は注意してください。

修繕に関する保証を説明して売る

築浅物件に限りますが、「修繕保証がある」ことを買主に伝えて売却するという方法があります。日本の住宅に関しては、築10年以内の物件であれば、「住宅瑕疵担保履行法」によって、買主が費用を負担せずに雨漏りなどの瑕疵を修繕してもらうことができます。これが修繕保証と呼ばれるものです。

住宅瑕疵担保履行法・・・購入後10年以内の新築住宅は、施工主(売主)が契約不適合責任を負い、住宅に問題があった場合は費用を負担して修繕する義務がある

要は、築浅物件であれば、家の購入後に雨漏りが発生した場合、それが修繕保証の期間内であれば、買主がその修理にかかる費用を負担する必要なく直せるわけです。この部分をしっかりと説明して、安心感を与えて売るという手法です。

不動産買取業者に売る

最後は、仲介に出すのではなく、不動産買取業者に直接売却するという手法です。家の売却は、不動産会社の仲介のもと、「そこに住みたい」と考える一般消費者に向けて売却するのが当たり前と考えている方が多いですよね。しかし、不動産の売却先は、他にも存在しており、不動産買取という手法が近年人気になっています。

この手法は、家を不動産会社に直接買い取ってもらうという方法で、不動産会社は、買い取った家をリフォームなり解体して建替えなりして、高値で再販することが目的となっています。そのため、現状の家の状態などあまり気にすることもなく、「雨漏りしている…」などと言った訳あり物件でも問題なく高価買取してくれるわけです。

不動産買取の場合であれば、自分で雨漏りの修理などを依頼する必要もなく、無駄なコストをかけずに手早く売却が完了します。

まとめ

今回は、雨漏りしている、または雨漏りしていたので修繕したといった家の売却について簡単にご紹介してきました。まず第一に覚えておかなければいけないことは、「雨漏りしている家」に関しては、その事実をきちんと告知したうえで売却しなければならないということです。この告知義務を怠った状態で家を売却し、後から買主に指摘された場合、契約不適合責任を問われてしまうことになり、最悪の場合、契約解除の話まで発展してしまうことになります。

なお、雨漏りに関しては、建物内に水が侵入していたという証拠ですので、きちんと修繕したとしても「柱や梁が腐食しているのでは…」「シロアリがいるのでは…」などという二次被害の心配をされてしまうことになり、なかなか買い手が付かない…という状況に陥ってしまうことが多いです。要は、雨漏りをしっかりと修繕したとしても、その事実だけで売れるなんてことはなく、住宅診断などを受けて「問題がない家」という証明をしてもらわなければならないのです。なお、こういった証明があったとしても、「メンテナンスを怠っていたのかな…」などといった不安を与えてしまう危険もありますので、どうしても仲介では買い手が付きにくくなってしまうと考えてください。

こういった事もあり、雨漏りしたことがある…といった訳あり物件に関しては、仲介での売却を試みるのではなく、不動産会社に直接家を買ってもらう買取という手法を検討してみると良いでしょう。不動産買取の場合は、買取した建物をリフォームしたり建替えしたりして再販する事が目的になっていますので、売却時点に何らかの問題があったとしても普通に買取りしてくれます。なお、買取後にかかるリフォーム費用などを差し引いて査定価格を出しますので、仲介で売却するよりも価格が安くなるという点は理解しておきましょう。ただし、仲介で売る場合は、自分で修繕のための業者探しをする手間もかかりますし、修繕費用や仲介手数料も必要になるので、不動産買取だからと言って特別、売却価格が安くなってしまう…なんて心配はあまりないと思いますよ。

そもそも、仲介の場合であれば、「買い手が付くのか?」という点から問題になるわけですので、素早く現金化することができるというだけでも、非常に大きなメリットになるのではないでしょうか!