太陽光発電事業者への土地売却は注意が必要!意外と知らない落とし穴をご紹介します

今回は、太陽光発電事業者に土地を売却する場合の注意点についてご紹介していきたいと思います。太陽光発電事業者に土地を売却するのには、「一般的には利用価値が低いという土地を買ってもらえる」「意外に高値買取が目指せる」などといった点がメリットと言われているのですが、メリットばかりに注目して太陽光発電事業者と取引した場合、予想外のトラブルに巻き込まれてしまう恐れがあります。

脱炭素社会やSDGsなど、地球環境保全が重視されている昨今では、再生可能エネルギーに関する事業がブームのようになって久しいですね。近年では、売電価格が低下しているなどと言われていますが、それでも太陽光発電のための土地売買はいまだにそこかしこで行われています。
しかし実は、太陽光発電事業は、一昔前よりも儲からなくなってきている…と言われるようになっており、実際に、太陽光発電事業者と土地取引を行った方の中には、土地売買に関するトラブルを抱えてしまった…という方が多くなっていると言われているのです。そこでこの記事では、太陽光発電事業者との土地売買で、どのようなトラブルリスクがあり、何に注意しなければいけないのかをご紹介していきます。

太陽光発電事業者に土地を売却するメリットとは?

それではまず、太陽光発電事業者に土地を買い取ってもらうことのメリットからご紹介しておきます。当然、全ての方にとってメリットがある取引になるわけではないのですが、所有している土地の条件などによっては、一般市場に売りに出すよりも「メリットが大きい!」と考えられるようなポイントもあるのです。

メリット1 一般的に「利用価値が低い」と考えられる土地も売れる

まず一つ目のメリットとしては、田舎の土地や山林など、一般的には「なかなか買い手が見つからない…」と考えられるような利用価値が低い土地でも売却することができるという点です。

現在日本は、東京一極集中というような言葉が作られているほど、都会にばかり人が集まる傾向にあります。さらに、少子高齢化により、日本の人口自体が減少を続けていますので、全国各地に活用が難しいと言われる利用価値が少ない土地が増えているのです。
人口が少ない田舎の土地などであれば、賃貸用のアパートなどとして活用するのは難しいですし、戸建て分譲のデベロッパーなども買取してくれないでしょう。つまり、田舎には、貸せない・売れない…と言った活用できない土地を所有していて八方ふさがりになっているという方がたくさんいるのです。

太陽光発電事業者は、こういった一般には活用が難しいと言われている土地でも活用できる稀有な業者の一つで、買い手が見つからないと思っていた土地を買い取ってもらうことができます。近年では、太陽光発電は、買取価格が年々下がってきていて、コロコロ制度が変わることから、個人で事業化するのは非常にリスクが大きいと言われるようになっています。したがって、個人が開いている土地を活用して、太陽光発電事業を行うなんてことはオススメできません。しかし、その土地を太陽光発電事業のプロに売るのであれば、事業の運営上のリスクは事業者が負うことになるわけです。したがって、現在、田舎の土地を持て余しているというのであれば、さっさと太陽光発電事業者に売却するというのは検討の価値が十分にあると思います。

メリット2 意外に高値で買ってくれる

二つ目のメリットとしては、太陽光発電事業者が提示する買取価格は、意外に高いという点です。

なお、「意外に高い」という判断は、あくまでも利用価値が低い田舎の土地だということが前提なのですが、本来は買い手を見つけることが難しい土地と考えると、十分に高値で買い取ってもらえたと判断できるような価格になります。
一般的に、太陽光発電事業者は、坪単価5千円~3万円程度で土地の買取を行っていると言われており、相場が坪1万円を下回るような土地であっても、坪1万円以上で買い取ってもらえたというケースは非常に多いです。そのため、予想していた以上に高値買取してもらえたという方が多くいるわけですね。山林などに関しては、坪5千円程度というのも珍しくないのですが、そもそも山林は坪数百円程度の価格しか付かないなんて物件も多いことから、坪5千円というのは破格の高さとも言えるのです。

当然、住宅地の価格と比較すれば「安い…」という判断になるのですが、住宅地として売却できないから太陽光発電事業者と商談をするわけです。住宅地として売却できれば住宅地として売れば良いと思いますよ、あくまでも、誰にも買ってもらえないような土地と考えた場合、太陽光発電事業者ならそれなりに高い価格で買い取ってもらえるというメリットになります。

太陽光発電事業者への土地売却は特殊

それでは次に、太陽光発電事業者に土地売却をする際、皆さんがおさえておくべき太陽光発電事業者との取引の特徴をご紹介しておきます。太陽光発電事業者との取引は、住宅地として売却するのとは全く異なる点があるので、以下のポイントは絶対に押さえておかなければいけません。

売買契約から引渡まで、かなり時間がかかる

まず一つ目の特徴として「売買契約から引渡までの時間がかかる」というポイントがあります。

太陽光発電事業者に土地を売却した場合、売買契約の締結から引き渡しまで、どれだけ早くても3~6ヶ月程度の期間があると考えておきましょう。場合によっては、引き渡しが1年以上先になってしまうこともあります。不動産の取り引きは、契約時点に手付金を支払い、残金を引き渡し時に支払うのが一般的ですので、引き渡しまで期間があくということは「売るという契約をしたものの、お金が入るのはかなり先になってしまう」ということを意味しています。

通常の住宅地としての取り引きの場合、売買契約を締結すれば、およそ1カ月の期間内に引き渡しまで完了するので、太陽光発電事業者との取引はかなり長くなってしまうと言えます。住宅地の取り引きでは、引き渡しまでの期間内に、住宅ローンの本審査などの手続きがあるので、引き渡しが1カ月後になるという仕組みです。住宅ローンの本審査は、売買契約書が必要になるので、契約と引き渡しの時期は、どうしてもずらす必要があるわけです。(不動産買取の場合はこの限りではありません。)

一方、太陽光発電事業者の場合は、売買契約の締結後、行政に対して太陽光発電の事業申請や許可を受けるといった作業を行うことになります。この申請に関しても、住宅ローンと同じく、土地が決まっていなければ行うことができないため、先に購入予定地の売買契約を交わす必要があるわけですね。

そしてこの違いが、太陽光発電事業者との取引で注意しなければならないポイントになります。そもそも、住宅ローンの申請と太陽光発電の行政手続きでは、その重みが全く異なりますよね。そして、行政の許可というものは、申請すれば即座に下りるものではありませんし、普通に却下されてしまうこともあるのです。例えば、売却地が農地の場合などは、申請しても太陽光発電事業の許可が下りないなんてことも考えられます。
本来は、この許可申請に関しても業者側がそのリスクを負い、引き渡しが完了してから申請すべきと言えるのですが、太陽光発電事業者はそのリスクを嫌います。したがって、ひとまずは、売買契約書を締結して、その段階で申請を行い、許可が下りれば最終的に購入するというスタンスになっているのです。

これは太陽光発電事業者との土地取引の最大の特徴で、「許可が下りたら購入する」という条件が『停止条件』と呼ばれています。停止条件は、売主にとって非常に大きなリスクになってしまう恐れもあるので、以下で簡単に内容をご紹介しておきます。

『停止条件』とは?

停止条件は、「太陽光発電事業の許可が下りれば買います」と言った条件のことで、こういった条件が付く売買は停止条件付売買と言います。停止条件については、その言葉の意味を誤解されているケースが非常に多いので注意しましょう。

『停止条件』は、売主と買主との間で既にお互いが売買する意思はあるものの、「売買を停止させている条件を付けている」契約になります。イメージとしては、シャッター付きの車庫に車が入っていて、シャッターが閉まっている時は車が前進できないけど、シャッターが上がれば車は前に進むというものです。要は、「停止条件」を逆の意味にとってしまい「許可が下りたら売却が停止するのか?」と勘違いしてしまう方が多いのです。

当然このような意味ではなく、太陽光発電事業者との取引は、「太陽光発電事業の許可が下りたら」という条件が付いていて、これが解消されたら停止が解除され、売却が前進するという意味なのです。

ここまで説明すれば、太陽光発電事業者との取引について、何でトラブルになるのか予想できますよね。要は、売り手は「売買契約ができたから、売れたと思っていた」ところで、停止条件となる「太陽光発電事業の許可」が下りなかったとなり、最終的には売却できなかったというトラブルが頻発しているわけです。さらに、この許可申請に関しては、行政手続きですので、いつ成就するのかも分かりません。許可が半年後に下りるのか、1年以上先なのか分からず、売り手はその間は売買契約に拘束されてしまうことになるわけです。

こういった特徴があることから、太陽光発電事業者との土地取引をする場合には、「〇月までに許可が下りなければ契約解除ができる」「他に良い条件を提示する業者が出れば、そちらに売却できる」などと言った特約を入れておくのがオススメです。そうしなければ、許可が下りるか分からない間は、契約に拘束されて何の動きもとれなくなり、最終的に売却できなくなる…なんてリスクが残ってしまうのです。

その他注意点について

太陽光発電事業者に土地を売却する場合、『停止条件』が付いているという点が最大の注意点になります。このポイントは、太陽発電事業者との土地売買でトラブルを引き起こす最も大きな原因になっていますので、相手の意見ばかり飲むのではなく、無駄に長期間拘束されるような事態にならないように注意しましょう。

なお、太陽光発電事業者との取り引きに関しては、他にも以下のような注意点があるので頭に入れておきましょう。

不動産会社の協力が得にくい

太陽光発電事業者への土地売却は、不動産会社は間に入ることを嫌がります。これは、上述したように、引き渡しまでの期間が長くなってしまうからです。不動産会社は、仲介手数料が利益になるのですが、相手が太陽光発電事業者となると、いつ仲介手数料が入ってくるか分からなくなってしまいます。さらに、停止条件で最終的に売却できないなんてリスクもあるのです。

他にも、引き渡しがいつまでたっても完了しなければ、売主から「どうなっているんだ?」とクレームが入ってくるリスクもありますよね。そのため、利益の割に面倒ごととリスクが大きいと考えることから、太陽光発電事業者との取引を嫌う不動産会社は多いです。実際に、不動産会社に、あなたの土地を買い取ってくれる太陽光発電事業者を探してと依頼した場合、良い顔はされないと思います。

農地は農地転用が必要

売却を考えている土地が農地の場合、農地法の転用許可が必要になります。つまり、この場合、通常よりもさらに停止条件のハードルが高くなってしまい、最終的に売却できない…となってしまうリスクが高くなるわけです。

農地を太陽光発電事業者に売却しようと考えた場合、実際に話を進める前に、自分で都道府県などに連絡し、農地転用の許可が下りるかどうかを確認しておくのがおすすめです。

まとめ

今回は、再生可能エネルギー事業がブームになっている中で、住宅地として利用価値があまりないと考えられる土地の売却先に上げられている太陽光発電事業者との取引の注意点をご紹介してきました。

田舎の土地などになると、住宅を求める方が減っていることもあり、立地などによっては売却が絶望的…となってしまうこともあります。当然、所有していれば固定資産税など、さまざまなコストがかかってしまいますし、利用価値がないのであればすぐにでも手放したいと誰もが考えることでしょう。

こういった場合、意外に心強い味方になってくれるのが太陽光発電事業者で、住宅地として利用価値がないような土地でも、それなりの価格で買い取ってくれる場合があるのです。ただし、この記事でご紹介したように、太陽光発電事業者との取引は、かなり特殊な部分もありますので、その辺りは絶対に押さえておかなければ、最終的に後悔するのはあなたになってしまいます。